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メーイチはまだ困惑しているみたいで、背負っていたランドセルを床に置いてその光景を眺め続けていた。反応がいちいち面白い。すべて知っている側からすると、初めて体験する人のリアクションって、テレビでドッキリに掛けられた芸人さんを見ているようでなんだか愉快だった。
小人は次に写しの書を持ち出してくる。それを森さんの前に置いた。彼女はランドセルを開けて、筆箱からペンを取る。それはやっぱり白い光りを放っていた。
「なんだよそれ、なあ、なんで光ってんの?」
メーイチの反応がおかしくて、手で口元を押さえないと笑い声が漏れてしまいそうだった。森さんの手は忙しなく動く。あっという間に白紙だったページに情景が描かれていく。
メーイチがようやく立ち上がって彼女の後ろ側へ。森さんが描くバラムードの世界を必死に覗き込んでいた。ぼくもそれを見てみる。バラムードの世界で、ラバンは魔法の街にいるはずだ。地図で描かれていたのは遊園地みたいな街の絵。魔女の森を越えた先にあるその街に彼は留まり続けている。ぼくがサイコロを振れなかったからだ。
写しの書に描かれたのは、ラバンの他にもう一人。魔法使いが着るような黒いローブを身につけていた。
「これは誰?」
そうぼくが尋ねると、小人は答えた。
「彼女は魔法使い見習いのリル。魔法の街パルファにある魔法学校へ入学するためにここへやって来たようです。ラバンが魔女の森を彷徨っていたとき、偶然通りかかった彼女がラバンを救い、そのままパルファまで一緒にやって来たわけです」
「へー、そんないきさつがあったんだね。魔法学校かー、面白そう。そこへ行くことはできないの?」
「ラバンには課せられた使命がありますから。そんなことをしている場合ではありません」
大人にちゃんと怒られたみたいに正論を言われて、ぼくは口を閉じるしかなかった。
たった数分でページを埋めた彼女は、ペンを握りながら小人に尋ねる。
「ねぇ、このリルっていう子がラバンと一緒に写ってるってことは、彼女もラバンの仲間になったってこと?」
「それはまだわかりません。それを決めるのも神さまの行動次第ですから」
「え、またぼく?」
「ええ。他にはいませんよ」
最終的には全部ぼくに責任を押し付けるんだから。もう慣れたとはいえ、やっぱり気分はよくない。
そういえば、となにも声を出さないメーイチを見てみる。なぜか彼は地図をジッと見続けていて、首を捻っていた。
「どうしたの? 変な地図でしょ? 英語の『B』みたいな形でさ、ここに川が流れてるから余計にそう見えるよね」
「あー、うん、そうだなぁ」
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