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「もう今ドキ、死体とかじゃビビらないですよね」
昼休憩になり、話題は、浜やんの聞いてきた“本物の愛”から、“禁断の愛”へと変わっていた。
愛妻家で通っている松田さんが、ふざけて不倫は文化だとか言ったせいで、意見が割れてしまった。
休憩室のコの字型に並んだソファーに座り、全員で昼を食べながら、不倫は純愛なのか、禁断だからこそ燃えるのか、そんなことを、ひとしきり話していた。
そこで、浜やんが言い出したのだ。
今どきの、俺以上にインターネットに馴染んだ世代は、昴以上にネットで変な知識を手に入れたらしい。
「し、死体……?」
俺の隣に座った日野さんが、恐がったように聞き返した。
休憩室の席は暗黙の了解で、鈴木の爺さんから年齢順に2人ずつ、時計回りに決まっていた。
真ん中のソファーは1番身長があってごつい俺と、1番ぽっちゃりして横幅のある日野さんが使うのだが、もう少し何とかしてもらってもいいような気はする。
浜やんは一番扉に近い端の席に座っていた。
「えっ、知らないんですか?」
さっきキレた事も、失恋した事すらも忘れたかのようにケロッとして聞き返している。
「死体とやるって意味か?」
俺が聞くと、
「ははは、いやいや、それはありがちすぎ! 日本でもとっくの昔にサイコキラーがやらかしたりしてるんで!」
何がおかしいのか、ケラケラ笑いながら答えた。
ありがちの基準がおかしいが、いちいち指摘していたらキリがない。
昴も時々恐いことを言うものの、それは冷めたような、諦めたような態度で、浜やんの場合は、それこそサイコな発想に片足を突っ込んだ感じだ。
平成生まれとひと口に言っても、少し種類が違う。
それに、俺と2人の時はあんな感じの昴でも、後輩がいると少し態度が違う。
「海外だと死んだ人とも結婚できるし、子供作れるんスよ」
こんな風に、危なげがない感じに補足するに留まっている。
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