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「それはネタだろ。ゴタこいてんじゃねーぞ?」
信じられなくて言うが、昴も昴で譲らない。
「マジです、マジですってば! 科学の進歩ナメちゃいけないッス!」
そんな言い合いをしていると、ローテーブルを挟んで浜やんの向かいに座った鈴木の爺さんが、ぽつりと口を開いた。
「──男同士だな」
また俺は、ギクッとした。分かってる。世間的に見て、今の俺が隠している事がおかしいのは。
まして俺の親戚世代の爺さんにとっては、有り得ないと思われても当然だ。
「うわ。差別」
浜やんがバッサリと言った。
「爺さーん、それは差別ですよー今の時代」
後輩として、早めに来て清掃なんかはしているが、相手が50近く離れた大ベテランだとか、年功序列とかは、あまり関係ない。
去年話題になった忖度という言葉を、浜やんと昴は知らないようだった。言葉の意味は理解できても、それを実行しようという気にならないらしい。
「でもなぁ……どうなのって正直僕も思うな」
爺さんの隣に座った松田さんが助け舟を出しても、
「はい、それ! 自分が既婚者だからって、言っていい事と悪い事があります!」
浜やんは持った箸をその松田さんに向けるだけだ。
隣に座る昴がそれをやんわり下ろさせながら、
「松田さん、どうするんスか? 例えばここにいる、一緒に働いてる勝さんが、本当は男の人しか愛せなかったら?」
と、まるで教えを説くかのように聞いた。
またまた、ギクッとさせられる。
他の人間が偶然口にするのと違って、昴だけは、何かが見えているような気がする。
こんな男所帯の中で、よりによって俺を選んできた。本当に警戒するべきは、こっちなのかも知れない。
昴と浜やんが追い詰めてくる。
「一緒にロッカーで着替えるの嫌がったりするんスか?」
「差別です、差別差別!」
この中では1番若手で体も小柄な2人だが、存在感は強い。
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