八、喪服

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自分たちから見て、間違っているものは間違っている。そう意見したり、指摘したりする事に、ためらいがなかった。 「いや、そんなつもりは……ごめん。(かっ)ちゃん」 なぜか松田さんに謝られる形で、俺も巻き込まれていた。 「そ、そうですよ、やめてください! 俺にも好みってもんがあるんで!」 俺はむりとキレるフリをして言い、今日イチの爆笑をかっさらった。 ひとしきり笑った頃、ずっと硬直していた日野さんが、やっと口を開く。 「……海外だと、いとこはダメって言うよね」 恐がって黙っていたのではなく、色々と考えていたらしい。 「いやいや、ここ日本なんで。それは禁断でも何でもないです」 浜やんがまたバッサリ言って、俺は少しホッとする。血は繋がっていると言っても、いとこより遠い親戚だし、セーフだと思った。 「日野ちゃんもドボンだって」 松田さんが日野さんの腿に手を置き、大袈裟に揺らして笑う。 「でも、名字が一緒って、ちょっと抵抗ない?」 カップの味噌汁を飲んだ拍子に日野さんが言ったから、また、吹き出しそうになった。 顔を離せない。火傷しそうになりながら必死に耐える。 昴の声がする。 「そんなの、僕、誰とも結婚できなくなるじゃないですか。ねぇ、爺さん」 同じ鈴木のよしみで爺さんに話を投げたらしいが、 「昴は、最近いい人いるのか」 爺さんからは実際の親戚みたいに鋭角に打ち返されている。 「いや、うーん、だから……究極、何でもアリじゃないッスかねぇ」 返答に困った昴が、苦しまぎれに話をまとめる。 「禁断とか言っても、その禁じてるのって、所詮その時代を生きてる人間の価値観でしかないんで」
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