46人が本棚に入れています
本棚に追加
自分たちから見て、間違っているものは間違っている。そう意見したり、指摘したりする事に、ためらいがなかった。
「いや、そんなつもりは……ごめん。勝ちゃん」
なぜか松田さんに謝られる形で、俺も巻き込まれていた。
「そ、そうですよ、やめてください! 俺にも好みってもんがあるんで!」
俺はむりとキレるフリをして言い、今日イチの爆笑をかっさらった。
ひとしきり笑った頃、ずっと硬直していた日野さんが、やっと口を開く。
「……海外だと、いとこはダメって言うよね」
恐がって黙っていたのではなく、色々と考えていたらしい。
「いやいや、ここ日本なんで。それは禁断でも何でもないです」
浜やんがまたバッサリ言って、俺は少しホッとする。血は繋がっていると言っても、いとこより遠い親戚だし、セーフだと思った。
「日野ちゃんもドボンだって」
松田さんが日野さんの腿に手を置き、大袈裟に揺らして笑う。
「でも、名字が一緒って、ちょっと抵抗ない?」
カップの味噌汁を飲んだ拍子に日野さんが言ったから、また、吹き出しそうになった。
顔を離せない。火傷しそうになりながら必死に耐える。
昴の声がする。
「そんなの、僕、誰とも結婚できなくなるじゃないですか。ねぇ、爺さん」
同じ鈴木のよしみで爺さんに話を投げたらしいが、
「昴は、最近いい人いるのか」
爺さんからは実際の親戚みたいに鋭角に打ち返されている。
「いや、うーん、だから……究極、何でもアリじゃないッスかねぇ」
返答に困った昴が、苦しまぎれに話をまとめる。
「禁断とか言っても、その禁じてるのって、所詮その時代を生きてる人間の価値観でしかないんで」
最初のコメントを投稿しよう!