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耐え切った俺は、平静を装うように冷やかす。
「……人間以外と? へへっ、動物とか?」
これはさすがに言い返されないはずだ。と思ったら、
「そーのレベルなら全然アリに決まってるじゃないですかー」
浜やんは当然のようにジャッジしてきた。1番若いのに、この場のルールでも作って仕切っているみたいだ。
「お前、さっきから基準おかしいんだよ!」
いちいち言っていたらキリがないと思っていたが、つい大声で言い返していた。
浜やんは嬉しそうに手を上に向けて手招きまでしてくる。
「勝さんも何か出してくださいよ!」
「何かって何だよ!」
「禁断の愛っ! このままじゃ結論無くなっちゃいます!」
「山手線ゲームしてんじゃねーんだぞ!」
そうは言ったが、確かにさっきから俺は、自分の事を隠すのに必死だ。何か言わなければ不自然に思われるかも知れない。
全員の視線が、俺に集中してしまう。
「だからその……、吸血鬼、とか……」
途端に、シラケた空気になってしまった。さっきの爆笑が嘘みたいだ。
昴と浜やんは、何だこのオッサンと言いたげに、冷めた目で見てくる。
「ちょっとー、キャラ考えてくださいよ勝さーん」
「エッフェル塔と結婚した人もいますけど、さすがにファンタジーすぎッス」
松田さんに言わせれば、俺も、ドボンだった。
中堅以上は揃いも揃って、今どきの基準について行けていない。
その時、廊下から人影が現れた。
「おはようさん」
午前中に商工会に行って、午後から来ると言っていた二代目だ。
七三分けのテクノカットで、中背の小太り。鼻の脇に大きなホクロがある以外は、“初代”五十鈴社長の現役時代の写真とそっくりだった。
「残暑見舞いのゼリー頂いたよ。事務所に置いとくからね」
「えーっ! やったー! ありがとうございまーす!」
浜やんが嬉しそうに立ち上がり、社長についていく。
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