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画面を見ながら、背後から殴られた痣みたいなそれを触る。
夢じゃない。金髪でマントを羽織った吸血鬼じゃなく、本物の、まだ黒髪だった槐さんもあの時、俺を食べようとしていたんだろうか。食べてしまいたいと、思ってくれたんだろうか。
だとしたら、もう両想いでいいんじゃないか。
だから告白もオッケーしてくれた。現に、俺はあの人の恋人になっている。
何を心配して、動揺する事があるのか。
血の繋がった、男同士。
それが、どうしたって言うんだ。
昴と浜やんに言わせれば、さっき挙がった“禁断”は全部セーフだった。
ネットに触れていないあの人を、時代に取り残されてると思っていたが、ついて行けなくなり始めているのは俺も同じだ。
誰と付き合おうが、誰かにとやかく言われる筋合いはない。
松田さんに急に聞かれてもそう答えられるほど、俺は、真剣なのだから。
その日の午後は、新しく憶えた情報がずっと頭の中で回っていた。
ふと時計を見たら3時28分だったり、作業で計量した数値が32.8gだったり、停まっていた車のナンバーが・3 28だったり、買おうとした惣菜が328円だったり……、やたらとその数字が目に付いた。
あの人と離れる事になっても、俺はこれから先、こうやって生きていくのだろう。
9月以降の事なんか考えたって仕方ない。それより今、槐さんがいてくれる残りの時間を目いっぱい過ごすしかない。
仕事から帰る時にはそう思っていた。あんなにビクビク、ギクシャクしていたのに、胸を張るように歩いていた。
ただ、この現状を肯定するように思えば思うほど、別の気持ちも強くなってくる。
槐さんと、離れたくない。
たとえ死んだ人間と結婚する事が本当に可能でも、日本の法律ではまず無理だろうし、何より、あの人が俺とそうしたいと思ってくれるかは分からないのだった。
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