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俺が、渡された帯を細くて白い首に回している間も、槐さんは落ち着いていた。
「私と心中したがる男も沢山いたし、狂った自分に耐えられずに独りで逝ってしまった男もいる。葬式に呼ばれないのは当然だし、慣れっこなんだ」
俺が手作業をしやすいように顔を上向け、長い睫毛の生えた目を閉じて、話し続けている。
もっとずっと前に聞いておきたかった身の上話。
今さら教えられても、どうしようもないことだ。
「私なんぞの葬式には誰も来たがらないだろうが、忠義くんなら話は別だ」
そんなことを言われても、俺には何とも答えようがない。
今から死ぬのに、死んだ後の事なんかどうだっていい。
どうせ、俺と槐さんの関係を理解してくれるわけでもない奴らだし。
俺が答えずにいると、槐さんは目を開けて見てきた。
「後遺症が残って、今も寝たきりだという話も聞いた。忠義くん、しくじるなよ」
口角なんか、少し上がってさえいる。
「ここで見事に私を殺せば、君は私にとって初めての男だ」
それを聞いて初めて、ガマンできなくなった。
握っていた帯を離して、両腕で体を抱き締めさせてもらった。
ムラムラしなかった。こんなに近付いたのに、他の男に抱かれてる所を見たのに。抱きたいとは、思わなかった。
ただ、このままこの人とずっと一緒にいたいと思っているだけだ。
抱き締めたまま、頭を撫でた。脱色してもツヤツヤしている金髪は、暗い部屋の中にぼんやり光っているように見える。
外に降っている雨の強さも、少しだけマシになった気がする。
もうここから出る事なんかないから、今さら止もうが降り続けようが、関係ないが。
「生まれ変わったら一緒になりましょ。また男同士でも、血が繋がってても……」
2年付き合った和泉にもできなかったプロポーズ。それより重たい言葉すら、あっさりと出てくる。
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