九、遺書

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「かっ……、はあっ、はあっ……!」 肺も苦しいし、右足も、熱を持ったようにズキンズキン痛む。 揉み合ううちに、はずみで踏まれたんじゃないと分かった。その人は、むりと俺の足を狙ったのだ。 「私を、ひとりに!」 槐さんは服の上から自分を抱き締めて、首を振った。自分以外、誰もいらないと言う風に。 俺は胸を押さえ、片足を引きずって何とか立ち上がった。 どうしてこんな事になってしまったのか分からない。体がふらふらする。 土間のサンダルを突っ掛けて、そこから逃げた。 槐さんが、望んだから。
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