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孫との約束
天国とは不思議なところだ、と最近になって気づき始めた。
皆死んだ時点の姿で天国の門をくぐるため、ここでは1525年生まれの少年や1925年生まれのお爺さんなど、老若男女様々な人々が暮らしている。死んだ時点の姿のまま何百年天国で暮らしてもシワは増えないらしいし、お天道様の光は感じるのにシミも増えないらしい。
意外と日々充実していて、おじいさんをこっちで待っている時間も少しずつ苦じゃなくなってきた。それも全て、こっちで出来た仲間たちのおかげ。下界であろうと天国であろうと、人は気の合う誰かと一緒にいたくなる性分らしい。
「絹江さん、こんにちは。今日も下界は暑そうですねぇ。うちのおじいさんったら、庭仕事で倒れやしないか、見ていてヒヤヒヤしてしまうわよぉ」
「ヤエさん、こんにちは。あらあら、きっともうすぐお盆だから、綺麗に整えたお庭をヤエさんに見せたいんじゃないかしら。ほら、ヤエさんの好きなケイトウが立派に育ってるわよ」
「あっらやだぁ、絹江さんったら。そういえば梅子さんのご主人なんか、梅子さんの帰りを待ってるのか、先週から毎日お仏壇をピーッカピカに磨いているのよぉ。見ているこっちが妬けちゃうわよぉ、ねぇ、梅子さん?」
「やぁねぇ、なぁに言ってるのよぉ。うちのじいさんはね、掃除以外のやることがなーんにもないのよぉ。埃ひとつ許さない、神経質ですぐ頭に血が上りやすい人だから、てっきり私よりも早く逝くと思ったんだけどねぇ、ふぁっはっは」
ヤエさん、梅子さんをはじめとする誕生年と死んだ年が近い方々と雲の隙間を囲んで座って、下界を覗き込んで他愛もない話をしながら、天国に生えている珍しい草花でアクセサリー作りをする事が最近のマイブームだ。
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