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小学校三年生の弟が、夢も希望もない単語を並べる。最近の子供はYouTubeもよく見てるし悲しい知識が豊富だなあ、と小学校六年生の俺は遠い目をして思う。
確かに、今日は休みとはいえ、彼は週五日は部活動がある。バスケ部の活動がなかなか大変で疲れる、ということは話していたような気がする。レギュラー争いもなかなかしんどいようだ。先輩に苦手な人がいるとも言っていたし、それで疲れて気持ちが弱くなるようなこともあるのかもしれない。ただ。
「……それだけで、死にたいなんて思うかね」
俺は腕組みをして告げる。
「これは、お前にまだ言ってなかった話なんだけどな、カツキ。兄貴、カノジョできたばっかなんだよな」
「は!?サツキ兄ちゃんに彼女!?え、どこの馬の骨!?ちゃんとした出自の女なんだよね!?ハニートラップじゃないよね!?」
「お前そういう単語ばっか覚えてくんじゃねえよ兄ちゃん泣くだろ!……ちげーよ、部活のマネージャー。告られて、付き合うことにしたらしい。来月遊園地行く約束してるらしいぞ。写真見たけど、結構可愛い姉ちゃんだった。流石に初デート控えた状態で死を選ぶようなことしないだろ」
そうだ。人間、楽しみなことがあるならそう簡単に死にたいと思わないはずである。その彼女と揉めたという話も聞いていないし、何か悩みがあってもとりあえずデートの後で考えることではなかろうか。
それに、俺としてはもう一つ疑問に思っていることがある。もし本当に兄が天国に行こうとした場合。その手段は、どれを選ぶのかと言う話だ。
「人が自殺する方法はいくらかあるけど、兄貴が選びそうなもの思いつかないんだよなあ。首吊り、するなら家の中とかでしそうだし」
俺は首を傾げる。
「兄貴、前にテレビでワイドショー見ながら言ってたんだ。窒息する系の死に方は苦しいからしたくないし、ビルの上から飛び降りるのも嫌だなあって。ていうか、飛び降り自殺って簡単に死ねそうに見えて案外そうでもないらしい。当たり所によっては、重傷で生き残って苦しい思いをすることもあるんだと。超高層ビルから飛び降りればそうでもないだろうけど、うちの近所に高層ビルなんてねえし?」
窒息する系の死に方がしたくないなら、川や海に飛び降りてドボンということもないだろう。
ていうか、この近所に川はない。もっと言うと、ここは海なし県である。
「じゃあ、電車に飛び込んで死ぬのは?あれなら即死できそうだよ?」
「相変わらずお前なんでそんな嫌なことばっかり知ってんの?誰に教わるのそういう話?……ちょっと確認してくる」
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