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その日、城仕え魔法士であるイアンとセリスは珍しく二人揃っての休みだった。
だから二人で何処かに行こうかと話していたのだが、どこかセリスの様子は少しおかしい。
それでも、良く見なければ分からない程度なのに、イアンが気がついたのは、さすが幼なじみと言う所だろうか。
「おい、セリス」
「ん?」
「お前、調子悪いんじゃないか?」
「いや、そんなことないよ?大丈夫」
「お前の大丈夫は当てにならない、………」
イアンがセリスに近づいて、彼女の額に手を当てる。
そして、眉間に皺を寄せため息をついて。
「お前、熱あるじゃないか」
「でも大したことないし。せっかくの休みだし、イアンと一緒の。」
だからデートしたいとボソボソと、熱で赤くなってる顔で、若干潤んだ目で見られて言われて少したじろぐ。
「っ(そんな顔で見るな)じゃ、少しだけな。直ぐに帰ってくるぞ。」
結局、セリスに折れてして渋々承諾した。
いくら精鋭の魔法士と言えど、好きな人には弱いのだ。
二人は、それぞれ準備をすませると、城下町へと歩いて行く。
「で、どこに行きたいんだ?」
聞きながらもセリスの顔色をしっかり確認するイアン。
今はまだ大丈夫そうだな。と内心ホッとする。出来たら無理をさせたくはない。
それでも許可してしまったのは自分も行きたかったのもあったからだ。
ならせめて、無理をさせない、体力使わない場所にしようとイアンは決めている。
「ショッピングは」
「ダメだ。人が多いし体力使うだろ。出来るだけ体力使わない所にしよう」
「例えば?」
「カフェとかどうだ。」
確か、この前見廻りをした時に新しい出来た店があるはずだとセリスに言う。
「良いね!行ってみたい!」とセリスは笑顔で答える。
「分かった。決まりだな。」
「でも良く知ってたね、イアン。あんまり興味なさそうなのに。」
「まぁな。把握しておくのも仕事だからな」
本当はお前が好きそうだから、調べてたとか言えるか。とイアンは心の中でぼやいた。
セリスと手を繋ぎ、ゆっくりとセリスのペースで無理をさせないように歩き、目的のカフェまで歩く。
そのカフェにつくと、イアンはセリスに先に座らせる。
「大丈夫か?」
「うん。にしても、へぇ~、凄いオシャレなカフェだね~!」
元気にそう答えるも、熱が上がってるのかセリスの顔は朝よりも赤くなっていて、いくらか苦しそうだ。
「無理するな。熱上がってるんだろ。とりあえず、ここで何か飲んだら帰るぞ」
「分かった。」
「紅茶でいいか?」
「うん」
イアンはレジまで飲み物を注文しに行った。
そして、戻ってくると紅茶をセリスに渡し、自分もブラックコーヒーを飲む。
「残しても良いからな。」
「ごめんね、イアン。」
「何がだ?」
「だってせっかくのデートなのに」
「気にするな。俺もデートしたかったしな。」
「でも楽しくないでしょ?」
「お前は楽しいか?」
「うん!」
「そうか、なら俺も楽しい。」
そんな会話をしながら、飲み物を飲み終えた二人は、城に戻った。
イアンはセリスを彼女の部屋に連れていくと、そのままベッドに寝かせ、
「氷持ってくるから寝てろよ。」
そう言って、冷凍庫のある厨房まで急ぎ足で行く。
イアンが戻ると、セリスはスースーと寝ていた。
その顔は苦しそうだ。
イアンはセリスの額にそっと持ってきた氷を乗せると、その横で静かに座った。
「(ったく。本当は結構辛いくせに無理するから。違うか、無理させたのは俺か、止めとけば良かったな)」
昔からセリスからのお願いには弱いのだ。惚れた弱みなのは、とっくに分かっている。
「早く直せよ。俺はお前の笑った顔が好きなんだから」
イアンは、セリスの寝顔を見ながら、髪をそっと撫でながら、そう呟いた。
終わり。
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