13人が本棚に入れています
本棚に追加
「おいおい、また簡単に妖に侵入される屋敷だな」
「ホントだよな。結界を使うんだから、屋敷全体に結界でも張り巡らせときゃいいのに」
(まあ、妖との共存を目指している以上、そうはいかないんだろうが)
「で、奴はどう侵入してどこへ向かったんだ?」
「普通に正面から侵入したらしい。その、妖に関する相談者を装ってな。話を聞いて案内したのはまだ術の修行中の弟子だったらしいんだが、気がつけばいなくなってしまって地面に落ちていた一枚の紙に」
話の先が読めた月岡は呆れ顔をしてため息をついた。
「まさかその紙に」
「ああ、『付喪神参上!』と書かれていたらしい」
(どこかアニメの世界の怪盗みたいなことしやがって)
「おい、急ぐぞ! 面倒くさいがこれで取り逃がしたら警察の信頼に関わる」
月岡は舌打ちをした。
(俺までアニメみたいな台詞を吐いちまってるじゃねぇか)
月岡と犬山は屋敷へと急いだ。揃いの白装束を身にまとった屋敷に住まう者があちらこちらと探し回っている中、見知った顔を見つけて月岡が声をかける。
「おい! 京極のーー柊の方か!?」
名前を呼ばれて立ち止まった女性は、長い黒髪をなびかせながらくるりと振り返ると驚いたように深い黒目を丸くした。
「……月岡さん? ようわかりましたね。そうです、柊です」
京極の双子当主のもう一人だ。外見はそっくりで髪型や服装も似ているのでほぼ見分けることはできない。
「いや、なんとなくだ。それよりあんたが他の連中と同じように前線に出張ってるということはーー」
「ええ、楓姉さんは屋敷の中で指揮を取っています」
「ふーん、なるほどな」
月岡は立ち止まったまま、もぞもぞとポケットからスマホを取り出した。
「何してはるんですか?」
「いや、ちょっとした確認だ」
「おい! 千尋! 急げよ!」
「先に行け!」
すぐに月岡はスマホをしまうと、煙草を取り出した。
「……何かわかったんですか?」
「ああ、たぶんな。あんた、ちょっと着いてきてくれないか?」
「え? ええ、それは構いませんけど……」
月岡は微笑むと、煙草を口にくわえて先に走っていった犬山の後を追った。
最初のコメントを投稿しよう!