第2話 因果

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 体育倉庫の前 「ハーイ! ブランカお手柄デースね!」  青髪ロングの少女がニコニコ笑ってやってくる。  にこやかに挨拶されたオオカミ赤ずきんは驚いてか、金色の瞳に戸惑いの色を浮かべてジリジリ後ずさった。 「マリナ? いったいなんのことです?」 「おーうゴケンソンめさるな潜入ゴクローさんデース。我らがボスご所望のブツ入手(げっと)してアンタはエロいデス」 「エロくないです……それを言うなら『えらい』で……じゃなくてどうしてここがわかったのかと聞いてます」 「シンシアの報告あってミーはベルさんのお使いネー。『カグヤ』どこー? ここ閉じ込めてるんデースか?」  マリナが倉庫の引き戸を足でスライドさせて開ける。中にいた下着姿のキサラギとヒイラギ両名と目が合う。 「きゃーきゃーっ! 見ないでよエッチすけべーっ!」 「ごっ誤解デース! 覗くつもりなかったのデース! お取り込みチューカマン……おジャマしまーしタ……」  そっと戸を閉じてシュンと落ち込むマリナをよそに、ブランカはある疑問を抱えてウームと唸りながら悩む。  ラギラギ姉妹(キサラギとヒイラギ)を連れ去る際に誰にも見られないよう、超速で移動していたのになぜ自分の仕業とバレたのか。事前に野生の感覚(ビーストセンス)で周囲に人がいないことを把握して、慎重に行動したのにどこでシンシアに捕捉されたのか。 「わからない」 「でもなぜ我々に連絡もせず単独で決行するのデス? それにあのスシ職人の情報だってまだ共有していナイ。ヤクザ・オヤブンの娘が『カグヤ』だと判明したこと、どこで知ったノ? お手柄のひとりじめ、いくナーイ」  とマリナがブランカの顎を指で撫でてクスッと笑う。 「こりゃまたしっぽり(・・・・)オシオキしなきゃイケマセンね」  マリナ・アンデルセン。『ラプンツェル』の語り部(テラーズ)。  体毛を手足のように自在に操るという異能者であり、天真爛漫(てんしんらんまん)なキャラにそぐわない趣味の持ち主でもある。 「やっ……やめて……気安く触らないで、くださいっ」 「プライドだけご立派な悪戯(オイタ)ばかりのオオカミちゃん、後輩の中じゃいちばんカワイク鳴くこと知ってマース」  美しいウェーブのかかった長い青髪は怪しく逆立ち、さらに伸びてブランカの腰や脚にイヤらしく絡み付く。汗が伝う真っ白な肌の上を舐め回すように這いのぼり、ミニスカートの内側の不可侵領域へと潜り込んでいく。 「くっ……あふっ……」  薄い唇を別の毛先でこじ開けて口内まで犯しながら、獲物の反応を堪能するようにマリナが舌なめずりする。  その時であった。
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