第2話 因果

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不埒者(ふらちもの)! 成敗(せいばい)ッ!」  デーンデーンデーン!  デデデ! デデデ! デーデーデーン!  暴れん坊将軍のテーマのイントロとともにいきなり、ヒイラギは颯爽(さっそう)登場するなりマリナを背後から斬った。 「(いや)がる娘に対して作法なき過剰なる性的侵略行為(スキンシップ)! 同胞(はらから)どうしである事実を考慮してもなお看過(かんか)できぬ!」 「モモリ・ヒイラギ!? どうして!?」  マリナがブッ倒れて束縛から解放されたブランカに、いつ着込んだか(ハカマ)姿のヒイラギが納刀(のうとう)しつつ振り向く。 「ふっ……ぱんつの借りは返したぞ……」 「うーっ」  ブランカは赤面した。 「ぐっ……いいところでジャマだて……」  一方でマリナが苦しみつつ起き上がって瞳を輝かす。 「サムライでーす! しかもツノまで生えてマース!」 「むむっ(みね)打ちゆえ、安心いたせっ」 「たぶんどっかの骨、折れてマース」 「心頭滅却すれば骨折もまたリラクゼーションなり?」  どちらも天然キャラなのだろうか。  間抜けなやり取りを経て互いに構えて睨み合う。 「てかユーは敵デースか?」 「貴様の感じ方に委ねよう」 「マリナと……申すデス!」 「ヒイラギ……いざ参る!」  ふたり同時に地を蹴って急接近ののちガッシと組む。抜き放たれたカタナを毛髪が絡め取るというカタチだ。 「むむっアジなマネをっ!」 「真剣シラハドリでーす!」  さらに刃を捻って破壊しようとするマリナに対して、ヒイラギは外力の方向にあえて逆らわず下段にいなす。  そこで素早く足を引っかけてマリナの体を横転させ、突きを決めんとするヒイラギだが次の瞬間アッと驚く。  倒れたはずのマリナが髪で掴むカタナを支えとして、上下逆さまのまま自身を持ち上げて浮かんでいるのだ。すかさず他の毛束を伸ばして剣山のように鋭く尖らせ、ダイヤモンド並みの硬度に変質させてヒイラギを狙う。  これにはさすがのヒイラギも武器(カタナ)を捨てて飛び退き、辛うじて串刺しまでは免れるも脇腹にかすり傷を負う。 「サムライの魂じゃないノー? リリースしますヨ!」  空中で反転して着地したマリナがカタナを投げ放つ。 「魂だよ! ゆえにこそ!」  カタナは真っ直ぐ飛来してきてヒイラギの額を貫く、かに見えたが新しく召喚された代用品(カタナ)(しのぎ)に弾かれる。 「いくらでも取り替えがきく!」  ヒイラギは二刀流の構えとなって再び距離を詰めた。 「やめてっ!」  ここでキサラギが出てきてふたりの勝負に水をさす。 「こんなところで戦ったら誰か来ちゃうでしょっ!?」  キサラギが口にした不安は直後に現実のものとなる。
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