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「委員長どうしたの? なんでそんなカッコなわけ?」
バレー部らしき女子がギョッとして駆け寄ってきた。
「なんの集まりなの? こんなとこで仮装パーティ?」
なぜか下着姿の委員長とオトギ話コスプレの3人が、体育倉庫の前で騒がしくしていれば当然の反応だろう。
「ダメよスズキさん! 来ちゃダメぇ早く逃げてぇ!」
「おーう目撃者デス! カワイソだけどしゃーなし!」
言うが早いがマリナは何も知らない一般学生めがけ、針のように尖らせた毛をマシンガンのごとく発射する。
毛針を浴びたスズキさんの全身には細かな穴があき、ジョウロのハスぐちみたいに少量ずつ血を撒き散らす。
「えっえっ何これぇ? ちょっとどうなってんのぉ?」
スズキさんは戸惑い、血の気を失っていく。
呆然として膝を付き、痙攣のあと沈黙する。
「きゃああああーっ! いやーっスズキさぁーんっ!」
「そういやコイツを連れてかなきゃダメなんでしタ!」
思い出したようにパンッと手を打ち鳴らすマリナが、半狂乱のていで泣き叫ぶキサラギを髪で縛ろうとする。
「やらせん!」
誘拐を阻止せんとヒイラギが刃を振るうよりも早く、マリナの髪は不可視のエネルギーによって切断された。
「りありー?」
一瞬にしてショートヘアとなったマリナがたじろぎ、帯電して妖しく輝くキサラギを恐れるように見つめた。
「ミーのヘアをカットしちゃうなんてノーウェイっ! たとえザンテツケンでもインポッセボーですのにっ!」
「ここから……でていけ……!」
「今のが『カグヤ』のパワーだとでも?」
「出ていけッ! わたしの世界からッ!」
キサラギは吠え、右腕を振り払う。
すると次の瞬間、マリナは消えた。
角度の関係からキサラギの視界に入っていなかった、マリナの左肩から先の部分だけ残って地べたに落ちる。
「あの能力……アリスの……!」
というブランカのつぶやきを聞く者などいない。
「キサ! 気をしっかり持つんだ!」
ヒイラギが差し伸べた手をキサラギは打ち払う。
「もうイヤこんなのたくさんだわっ」
嫌悪に歪む表情を恥じるようにうなだれて隠す。
「くだらないヤクザとマフィアのナワバリ争いなんか、どっか遠いヨソの国で好きなだけやってちょうだいよ。『カグヤ』だのなんだのどんだけスゴいか知らんけど、いつの間にキサラギ・シンゲツ争奪戦になってんの?」
「おいキサ!」
「わたしさえいなければみんな死なずに済んだわけ? タッちゃんカッちゃんも……クラスメイトだって……」
「おちつけ!」
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