第3話 欺瞞

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 路上 「ファッ○! 無能リーダー!」  アンドレアが憤慨(ふんがい)して道ばたの空き(カン)を蹴っ飛ばす。 「やっぱり! アネゴの予感は当たってたんだ!」  数ヶ月前  ニューヨーク市 某ホテル 「お紅茶よ。スコーンもどうぞ」  明らかに無理して作ったとわかる笑顔のアナベルに、おもてなしされながらアンドレアは恐る恐るたずねる。 「疲れてません? 最近ゲンキないっすよアネゴ」 「わかっちゃう? アンには隠し事できないなぁ」  アンニュイ姉貴分がタメ息まじりに悩みを語り出す。 「先週、『彼』とデートしたんだけどね」  彼とはグリム・ファミリーの偉大なるボスのことだ。 「『オトナっぽくなったね』ってお世辞を言われたの。こう目をそらしてガッカリしているみたいに言うのね。ワタシは奥さんに負けたくなくて頑張ってるつもりよ。なのにあんな反応されちゃって予感が確信に変わった」 「えっ?」 「彼……ロリコンなの」 「へっ?」 「テラーズ部隊がファミリーを強大にしたのは事実よ。創設理由が彼の趣味の延長線上にあるにせよ結果的に」 「く……くだらねぇ〜」  アンドレアはドロドロに脱力すると卓上に突っ伏す。 「じぶんもボスに視姦(しかん)されてたわけっすかキチィわ〜」 「アンちゃんカワイイもんねツインテールお似合いで」 「やっ茶化さないでくださいよぉ割とショックなんす。こちとらマジメにギャングスター目指してたんすよぉ。なのに実質ボスの愛玩動物(ペット)でしかないとかキモいっす。いっそポリコレスタイルのモヒカンにして抗議すっか」 「ダメダメ……可能な限りロリっぽくしておきなさい。さもないと……あっさり捨てられて消されちゃうわよ。まァ努力しても(しゅん)が過ぎたとボスに判断されたら最後。年齢のストライクゾーン外れる頃には総入れ替えかも」 「まさかっ……成り上がりたくて血で汚れてきたのに、そんなのっ……あんまりにも甲斐(かい)がないじゃないすか」 「いざとなれば妹分のアナタやマリナはワタシが守る。くわせ者のリリアンにだって好きにさせるもんですか」  アナベルがアンドレアに寄り添って小さな肩を抱く。 「家族だもの」  現在 「その時がやってきた! もう組織なんか信じねぇ! リリアンも回しモンだ! うちら使い潰すつもりだ!」  ピンク色のツインテールを振り乱すヤンキー少女は、狭い路地に差しかかって謎の女児とぶつかってしまう。 「こらチビガキっ」 「ほえ? 英語? どゆ意味?」 「オマーエ! ショートショートちーびっ!」 「アタイの……どこが……ちっこいっての?」
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