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純和風旅館・テンプラ
キョートのシンボルであるヤサカ・タワーを眺めて、露天風呂にひとり浸かるシンシアが誰かに話しかけた。
「アレ見える? 湯気でボンヤリしちゃってるかな? ハルク・ホーガン寺とかいう有名な建物なんだってさ。えっ間違った? はいはいホーカン寺っていうのね? スノウはお利口だねぇ〜キョートにも詳しいんだぁ〜」
スマホも無線機も手元にないというのに相変わらず、まるで何者かが近くにいるかのように喋り続けていた。
彼女は狂っているのだろうか?
それともテレパシーなど使うエスパーなのだろうか?
「あっゴメン! 新入りのお兄さんと話したいのっ! 繋いでくれる? うん……また……お喋りしようね?」
通信の相手が交代するらしい。
シンシアの表情に先ほどまでの穏やかさは既にない。
「ええ大丈夫ですよ普通に電話みたいにしてもらって。スノウがうまく調整してくれてるんで傍受されません。そもそも幹部クラスだとリンゴを呑んでいませんしね。てかダブルスパイとか疑いだしたらキリないですって」
いったん湯船から上がり、そよ風で白い肌を冷ます。眩しい肩から伝うしずくが、乳房の谷間に小池を生む。
「あーしとしてはもっと一気に片付けたかったんです、『赤ずきん』に隠れ蓑やってもらって同士討ち狙いで。でも『ラプンツェル』が落ちたのは割とデカいですよ、アイツああ見えてプリンセス属性で厄介な奴だったし」
「スパ……イっしょに入ってもぉ〜……」
背後で響く声にシンシアは震えて黙り込む。
「いいかなぁ〜っ? シンシアくんっ?」
テラーズ部隊の指揮官がユラリと踏み出す。
ギオン・シラ川の近辺
スイーツ店・スキヤキ
「キョートのスイーツ……キュートなのだわ」
卓上で並ぶゼンザイやアンミツに興奮しているのは、三角巾とエプロンをつけた幼女でグレースという名だ。スイーツならば作るのも食べるのも好きな彼女が扱う、『ヘンゼルとグレーテル』の異能もスイーツにちなむ。
「しゅご〜い! この……アラモードぉ〜!」
熟練パティシエ幼女はスプーンをしゃぶる。
「抹茶プリンかと思いきやアボカドだったのだわ〜! ソースに至ってはチョコじゃなくイカスミだわよ〜!」
グレースも絶賛するほど素晴らしき品々が次の瞬間、巨大ハンマーにテーブルごと叩き潰されてゴミと化す。
「ほんぎゃ〜! ひっど〜い許さんのだわ!」
凶悪な巨大ハンマーで天井を打ち砕いて降ってきた、園児用スモックを纏う娘は『一寸法師』のオオヅチだ。
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