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「あちゃあゴメンっての! 別だん悪気ないわけよ!」
トンボ玉つきのヘアゴムで結ぶポニーテール振って、平謝りされてもグレースの怒りがおさまるはずもない。
「キョートに来るの楽しみにしてたのに台無しだわ!」
グレースは床に転がるゼンザイの白玉ダンゴを拾い、怨念を込めることで小型の爆弾へと変質させて投げた。
「食らえだわ!!」
「物質変異系!?」
すぐ飛び退くオオヅチだが破裂したダンゴの爆炎で、後方へと吹き飛ばされて火傷まで負ってもんどり打つ。
「熱ゥッあんたヘンなジャパン語だけどマフィア!?」
「そーゆーアナタはヤクザだわねドーナツカッター!」
お次は抹茶ドーナツが円月輪みたいな刃物となって、高速回転しながら飛び交ってオオヅチの肌を切り裂く。
「痛いイタイもう降参コーサンします許してっての!」
「スイーツのうらみはスイーツで晴らすべしだわよ!」
グレースはデカい泡立て器を召喚すると両手で操り、大量のクリームを巻き上げてオオヅチに塗りたくった。
「ひゃん! やだベトベト〜くっついてとれない〜!」
「あたしの合図ひとつで起爆するクリーム爆弾だわよ」
泡立て器を肩に担いで指を鳴らそうとするグレース。一方すっかり怯えた様子で座り込んでしまうオオヅチ。
「待ってぇホントにゴメンってば殺さないでっての! お詫びするよ命だけは助けてよマジでお願いします!」
イジメみたいな状況がグレースを冷静にしたらしい。
「あうっ……少々やりすぎかもだわね……反省した?」
「そりゃお菓子を粗末にしたら怒られて当然だっての」
「そもそもナゼあんなドカーンって現れたんだわよ?」
「落っこちる前にハンマーで衝撃を相殺しようとして、たまたまそこにお店があったわけで不可抗力なわけよ」
「で? どうやってオトシマエつけてくれるのだわ?」
「アタイってばモノのサイズを拡大縮小できるわけよ。たとえばコイツをウチデ・ハンマーで叩いて念じます」
たちまち約2メートルの超サイズとなったパフェに、グレースは瞳をキラキラさせながら喜んで飛びついた。
「すてき! 幸せだわよ!」
「どーぞ! これオマケ!」
「まあカワイイ! おクルマの砂糖菓子なのだわっ!」
「パトカーだよ! コドモはいっぱい食べなくちゃ!」
「いただきま〜す! う〜ん不思議なお味あんぐっ!」
「おっきなおクチ! いくらでも入りそうですなぁ!」
ヤクザとマフィアの苛烈なる抗争など忘れたような、平和で幸福な美しき国際交流のカタチがそこにあった。
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