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◇ラブホテル
それで、あの無茶振りされた残業を手伝ってもらった日に
俺は根米と一緒に食事をした。
お腹もすいてたし、残業仕事を手伝わせておいてご飯のひとつも
ご馳走しないなんてあり得ないだろ?
まず食事をして店を出ると、根米が食事をご馳走になったから
今度は自分がお酒を奢ると言い出した。
俺は内心疲れていたし早く帰りたかったんだが、自分の時間を割いて
手伝ってくれた相手を無碍にもできなくてそれからお酒をふたりで飲んだ。
そしてその後、ほどよい疲れを感じつつ俺はほろ酔い気分で
駅までの道を歩いていたんだ。
ふらぁ~りふらぁ~りとね。
居酒屋の居並ぶ夜の街に似つかわしく、少しそれるとラブホなんかが
あるのが見えるんだな、歩きながらね。
この辺のラブホはその辺の普通のホテルとかわらない外観をしている。
結構箱が大きめでしつらえなども重厚感があると耳にしたことがある。
今、優雅にラブホテル入れるヤツら羨ましいよな、なんて思いながら
ブラリと歩いていたら、根米が駅までの直線の道を外れて細い道に入った。
ちょっと遠回りになるんじゃね? と思いつつも、この辺の地理を熟知している人間の行動ゆえ、だまってそっちの方向へと俺も付いて行った。
会社から駅までの道のりの途上で時々視界の隅に入り込むことのある
ゴージャスなHOTEL HOABEの前で立ち止まった根米が
俺の手を引いて歩き出した。
普通のホテル並みの重厚さで建っている建築物は、光の洪水で
人の視覚に金色に輝いているように見せるという演出を施している
ところが唯一LOVE HOTELらしさを強調していた。
7/1
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