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(なんだ、まだこんな時間か…)
目が覚めたのは、6時少し前だった。
疲れてるはずなのに、こんな時間に目が覚めるとは…
認めたくは無いが、俺も歳を取ったということか。
今日のスケジュールは決まっているが、時間はまだある。
バッグからパソコンを出そうとして、その手を止めた。
もう時間に追われる生活はやめるんだ。
俺は、もう一度、ベッドに横になった。
出来ることなら二度寝がしたかったが、目を閉じていてもなかなか眠くはならなかった。
代わりに、なぜだか昔のことが思い出された。
***
俺は貧しい家庭に生まれた。
貧しさの原因は怠け者の父親のせいだった。
父は俺が子供の頃から家にいることが多かった。
家にいて、よく絵を描いていた。
何の絵なのかもわからない、とてもおかしな絵だった。
絵を描かない時はどこかにふらりと出て行くか、眠っていた。
そんな父親とは裏腹に、母は朝から晩まで働いていた。
家を空けることも多かった。
だから、母親にはあまり構ってもらえなかった。
暇そうに見える父も、子供にはあまり関心がないようだった。
それがよくわかるだけに、俺も、父に「遊ぼう!」とは言えなかった。
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