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友達がいなかったわけではない。
だけど、学校から帰ったら、そのまま家にいることが多かった。
その原因のひとつは、俺が自転車を持っていないことだった。
たいていのクラスメイトは自転車を持っていたから、皆についていこうと思ったら、俺はひとり馬鹿みたいに走らないといけない。
走ったら、喉も乾くし腹も減る。
だけど、金がないから、喉を潤す飲み物も、腹を満たす食べ物も買えない。
子供でも、普通はそのくらいの金を持ってるものだが、俺は持っていなかった。
だから、だんだんと友達とも疎遠になっていったんだ。
家にいても退屈だった。
普通なら漫画を読んだりゲームでもするのだろうが、生憎、我が家にはそんなものはない。
仕方なく宿題をする。
終わっても暇だから、ひたすら教科書を読み、問題を解いた。
そんなことを続けるうちに、俺の成績はどんどん上がって行った。
楽しいわけではなかったが、そのくらいしかやることがなかっただけのことだ。
中学に入ると、成績の良いことが殊更によくわかるようになった。
それにつれ、周りの環境も少しずつ変わっていった。
俺は、頭の良い子、として、一目置かれるようになっていた。
以前は、貧乏な子、というのが俺についたレッテルだったが、それが変わったんだ。
そのことは、俺にとってもありがたいことだった。
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