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「三沢先生、私にどんな御用ですか?」
ランチから戻ると、二宮さんが俺の所に来た。
坂田が話したんだろう。
「あぁ~…坂田先生から聞かれたのですね。」
「はい、相談に乗ってやってくれと。
私でお役に立てるかどうかはわかりませんが、出来る限りのことはやらせていただきます。」
こうなったら仕方がない。
とりあえず、相談してみることにした。
「実は、母に家を買ってやりたいと思ってます。
俺も住める二世帯住宅を。
でも、どんな家が良いのか、どこに住みたいのか、何もわからないんです。
本人に訊ねれば良いのでしょうが、長らく離れていたせいか、何か話しにくく。
それに、母に言ったら、そんな贅沢なものはいらない、と言われそうな気もするんです。」
あまり話したくなかったはずなのに、なぜだかけっこう率直に俺は話していた。
「なるほど。そういうことなら、お役に立てるかもしれません。」
二宮さんの答えに、どこかホッとした想いを感じたことが自分でも不思議だった。
相談にはあまり乗り気じゃなかったはずなのに、どうしたことだろう?
そういえば、俺は仕事については自信があるが、プライベートはどうもだめだ。
家のことも、本当は誰かに相談したかったのかもしれない。
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