25人が本棚に入れています
本棚に追加
時間がかかるかと思われていたが、たったそれだけで二宮さんはその場を去った。
自信ありげだったが、何か策でも思いついたのだろうか?
それから二宮さんはどこかに出かけた。
書類を届けに行ったり、備品を買いに行ったりすることもあるから、特に珍しいことではない。
「三沢先生、今、お時間良いですか?」
夕方になり、どこかから戻って来た二宮さんが、俺に訊ねた。
「少しわかりました。」
「え?何がですか?」
「家のことです。」
「えっ!?」
なんでも、クライアントからケーキをもらったから、と口実を付け、早速、母の所に行ってきたというのだ。
二宮さんの早業には、驚いてしまった。
「日持ちしないものだから、早く食べて下さいと言いましたら、私にも一緒に食べて行ってとおっしゃって下さって…」
それもきっと想定していたことなのだろう。
「その時にいろいろお話させていただきました。
けっこうお話好きのお母様ですね。楽しかったです。」
あの母が話好きだって?
何か意外な気がした。
家では必要なことしか話さなかったし、それは今も変わらないと思っていた。
母は二宮さんの前では、いつもとは違っていたようだ。
最初のコメントを投稿しよう!