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「そうそう、家の前に大切なイベントがありますよ。」
「イベント…?なんですか?」
「お母様のお誕生日です。」
「誕生日……」
俺は、子供の頃から誕生日というものを祝ったことがなかった。
アメリカに行って、誕生日パーティをサプライズで開かれた時が初めてで、とても驚いたものだった。
もちろん、母さんの誕生日も親父の誕生日も祝ったことはないし、誕生日がいつなのかさえ、覚えてなかった。
「いつですか?」
「来週の17日です。
この日の夕方は、開けといてくださいね。」
「え?」
「お店は私がセッティングしますね。」
「は、はい。」
つまり、その日は、母の誕生日を祝うわけだな。
初めての誕生日祝い。
なんだか気恥しいが、ようやくそんなことが出来るようになったことには嬉しさを感じた。
これもすべては二宮さんのおかげだ。
ありがたい。
「二宮さん、プレゼントはどうしたら良いでしょうか?」
「お母様はどんなものがお好きですか?」
「お恥ずかしながら、そういうこともまるでわからないんです。」
「でしたら、ネックレスや花束が良いのではないですか?
それらを嫌う方は、まずいらっしゃいませんよ。」
「ネックレスか花束…」
そういえば、母がアクセサリーをつけているところは見たことがない。
部屋に花が飾られていることだって。
来週ならもうあまり日がない。
結局、ネックレスは二宮さんに見立ててもらうことにした。
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