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「二宮さん、今日はどうもありがとうございました。」
「いえ、私は何も…」
母に贈るのは、パールのネックレスにした。
母がネックレスを付けた様子を想像したら、なんだか泣きそうになってしまった。
今まではそんなものさえ付けることが出来なかった母が、無性に気の毒に感じられた。
これからはできるだけ親孝行をしよう。
母を幸せにしたい。
その気持ちはさらに強くなった。
今日のお礼に、俺は二宮さんを食事に誘った。
宝石店近くの小洒落たレストランだ。
二宮さんは、食事のマナーが綺麗だ。
パッと見は庶民的な感じに見える人だが、この分ならどんなところでも行けそうだ。
「アメリカにいらっしゃる間は、あまり連絡を取られてなかったんですか?」
「は、はい。およそ20年、ほぼ連絡は取ってません。」
「そうだったんですね。」
なんだか意外な気がした。
「どうしてですか?」という質問を予想していたからだ。
「いろいろと事情がありまして…でも、そんなこと言い訳にしかなりません。
俺は親不孝なんです。」
「そんなことはありませんよ。
お母様は三沢先生のことを、自分にはもったいないような良く出来た息子だとおっしゃってました。
頭は良いし優しいし、非の打ち所がないと。」
信じられない想いだった。
俺は、母さんに今まで優しくしたことなんてなかったのに。
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