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「遥香さん、お酒は飲まれますか?」
「はい、そんなに強くはありませんが、雰囲気は好きです。」
「じゃあ、飲みに行きましょうか。
でも、俺、このあたりの店を知らないんですよ。」
「行き当たりばったりでも良いんじゃないですか?」
遥香は、付き合いやすい女性だ。
わがままも言わなさそうだし、感じの良い女性だと思った。
店を出て、適当に歩いていると、バーの看板をみつけた。
「とりあえず、ここに入ってみますか?」
「そうですね。」
その店は地下にあった。
扉を開け、中に入る。
客は程々いるが、静かだ。
女性と二人で来るには良さそうな落ち着いた雰囲気だった。
遥香はカクテルを、俺はマティーニを注文した。
「今夜の出会いに乾杯しましょう。」
俺達はグラスを合わせた。
「それにしても今日はびっくりしましたよ。」
「何も聞かされてなかったんですか?」
「はい。ただ食事に行くようなことを言われてました。」
「ご迷惑でしたか?」
「いえ、そんなことはありません。
ただ…俺は今、やらなければならないことがあり、それが済むまで、恋愛に気持ちが向くかどうかわからないんです。」
俺は率直な気持ちを述べた。
「それは私のことが気に入らなくての口実…ではありませんか?」
「いえ、違います。本当のことです。」
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