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「ありがとう、二宮さん。」
数日後、母の誕生祝いの食事のことを二宮さんが伝えてくれた。
今日は、寿司屋に行くらしい。
「予約はちょっと早いですが6時です。
いつもそのくらいに食べてらっしゃるらしいので。
お母様は、お寿司が好物らしいので、きっと喜んで下さいますよ。」
「えっ!そうなんですか?」
そんなこと、初めて聞いた。
そもそも、家で寿司を食べたことなんか、多分ないはずだ。
二宮さんは、どうやって聞き出したのだろう?
先日買ったパールのネックレスも忘れずに持ってきた。
母は喜んでくれるだろうか?
その日は、なんとなく浮かれ、その反面、緊張もしていた。
なんせ、母と二人で食事に行くなんて初めてのことだ。
デートに行くよりもずっと緊張する。
二宮さんと少し話をしたかったのだけど、彼女はどこかに出かけていた。
話をして、励まして欲しかったのだと思う。
心配はいらないと言って欲しかったのだろう。
甘いな。
夕方になり、彼女が戻ってきた。
「ケーキと花束を先にお渡しして来ました。
お荷物になると思いましたので。」
「そ、そうでしたか。ありがとうございます。」
「経費はまた後程、請求させていただきますね。
今夜は、きっととても楽しい誕生日になると思いますよ。」
「ありがとうございます。」
二宮さんは微笑んでいた。
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