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時間になり、俺は店までタクシーに乗った。
母にもタクシーを予約してくれたらしい。
店の近くで車を降りた。
母はまだ来ていない。
「健人……」
「えっ!?」
俺の目の前に、母はいた。
俺の知らない母が…
真っ白だった髪は艶やかな黒髪になり、緩やかなパーマで整えられている。
唇も赤く、頬もほんのりと染まり、いつもより元気そうに見えた。
白い、刺繍の施された品の良いブラウスと小花柄のロングスカート…
「やっぱりおかしいかい?
今日ね、二宮さんが美容院に連れて行ってくれたんだよ。
それと、こんな素敵な服をどうもありがとう。
でも、こんな素敵な服、私には似合わないよね?
恥ずかしいよ。」
胸がいっぱいで、何も言えなかった。
そうだ…都会の寿司屋に行くなら、いつもの母の格好ではあまりにも体裁が悪い。
そんなことにも俺は気付いてなかったけれど、二宮さんがうまくやってくれたんだ。
「母さん…とても綺麗だよ。
服も良く似合ってる。」
「本当かい?
そんなに見ないでおくれよ、恥ずかしいよ。」
本人は照れていたけれど、以前と比べると10歳以上若返っていたし、意外なことにけっこう美人だ。
俺までが、誇らしい気分になっていた。
(あ……)
二宮さんの微笑みの意味がわかったような気がした。
これは俺にとってもすごいサプライズだ。
母さんをこんなに綺麗にしてくれるなんて…
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