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寿司屋は割と庶民的な雰囲気の店で堅苦しくなく、でも、鮮度は抜群だった。
母は本当に寿司が好きらしかった。
「母さん、寿司が好きだなんて知らなかったよ。」
「…そうだね。私は肉より魚が好きでね。
お寿司は昔から好きだったんだよ。
でも、長い間なかなかたべられなかったけどね。」
「今日はたくさん食べてよ。」
「ありがとうよ。」
母の笑顔を見ていると、こっちまで顔が緩んでくる。
たったこれくらいのことで、こんなに喜んでくれるなんて…逆に申し訳ないような気分だ。
「母さん、誕生日おめでとう。」
一通り食べ終わったところで、俺は、ネックレスの入った紙袋を手渡した。
「え?」
「プレゼントだよ。」
「えーー…」
母は、紙袋をのぞき、困惑したような顔に変わった。
「出かける時にでも付けてよ。」
「これ…もしかしてネックレスなのかい?」
どうやらケースの形でわかったようだ。
「そうだよ。」
「まさか高いものを買ったんじゃないだろうね。」
「心配しなくて大丈夫だよ。」
気になったのか、母はネックレスを確認する。
「あ……」
母はネックレスをみつめ、その瞳には涙が溜まっていた。
「こんな高いものを…」
母の瞳から真珠のような丸い涙がこぼれ落ちた。
今まで何人もの女性にアクセサリーをプレゼントしたけれど、これほど喜んでくれた者はいなかった。
(良かった……)
日本に帰って来たことを本当に良かったと思えた。
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