月が燃えた、夏の終わり。

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夏の終わり、親友が炎上した――。 *** 「ねえ、チャリ漕いできていい?」 私は一方的にそう告げて、返事も待たぬまま、スマホを手に玄関へ足を進めた。 遅れたように母親の返事が2階から聞こえてくる。 「8時までに帰っておいでー」 「はーい」と返事をしたのはもう、靴を履いた頃だった。 それから私が外への一歩を踏み出したときに、遅れて2階から親の声がする。 「え、自転車?!」 (残念でした。おせーよ) 私は思わず苦笑して、聞こえないふりをしながら外へ駆け出した。 ドアの閉まる音を確認したら、ブロックの壁を乗り越えて、隣の家へと渡る。 親があんな反応をするのは、全くおかしなことではない。 だって私は自転車を持っていないからだ。 なのにそんな私が『自転車漕いでくる』と言って出かけるなんて、誰でも違和感を覚えるはずだ。 一発目で騙せたのは幸いだった。 人の話をいつもボーっと聞いているあの人のことだ。 とりあえず返事をしておいたのだろう。 それに今日は少しだけ感謝しておく。 ぴょいっと隣の家の敷地に不法侵入した私は、2階の窓へ声をかける。 「おい!」 我ながら思う。 礼儀の「れ」の字もないな、と。 すると、カラカラっと思ったよりも可愛らしい音を立てて窓が開いた。 この音は毎回、私のツボにハマってくる。 今回も少々吹き出していると、出てきた男が「チャリ?」と呆れたような声を出した。 私は浮き上がってくる笑いを沈めて、何度か頷く。 そうすると男は部屋へと戻り、1分も経たないうちに帰ってきた。 「ほらよ。」 彼がそう言うと、上からキラリと光るものが振ってくる。 私はそれを両手で受け止め、口の端を引いた。 「サンキュ!8時に返す!」 受け取った自転車の鍵を2階に向けて、ひらひらと揺らす。 男、三木(みき)力丸(りきまる)は1度だけ頷いて、ぴしゃりと窓を閉めた。 (閉めるときは普通なのになあ) と、その音を聞いて苦笑する。 力丸の家の駐輪場は、この裏にある。 私は駆け足で駐輪場へ迎い、ブラックで澄ました顔の自転車の鍵を外す。 何度か借りたこの自転車だ。 こいつもそろそろ私に懐いてくれたはずだ。 「今日は頼むよー……」 実はわたくし、こいつを借りるたびにひっくり返ったり、人を跳ねそうになったり、いろいろな危機に直面しているのであった。 でも今日、そんな時間のロスは許されない。 目的地に爆速で向かい、ここへ爆速で帰ってこなければならないのだ。 なんせうちの門限は8時だから。 私は地面を蹴り、力丸の愛車と共に風を浴びた。 夏の終わりは、暦上で8月23日くらいだったように思うが、私にとっての夏の終わりは、夏休みの終わりだった。 ちなみに、うちの学校の夏は早く終わる。 ついでに今日は、夏の終わりだ。 正直、道はあやふやだった。 でも必ず着かないといけない。 そして、話さないといけない。 我らの住む住宅街を抜けると、田んぼしか見えないような場所に抜ける。 ここからが難関だ。 同じようなこの田んぼと田んぼの隙間を正しく走行し、目的地につかなければならない。 夏も、もう終わりに近づいている今、涼しくなっていることを期待していたが、残念。 涼しいのは最初だけ。 このスピードで5分ほど漕げば、足は疲れ、でも止まれば、風がやみ、暑さに苦しむという地獄が待っていることだろう。 それを想像した私はピンと背筋を伸ばした。 そのまま鼻をすすってみると、 稲の匂いとか、肥料かなんかの、わかりやすく言えば、便みたいな匂いとか、宙を歩く蜘蛛とか、揺れる猫じゃらしの音とか。 そんなあまり好かれない匂いや音や風景が私を通して頭が感じる。 え?車の音はって? ここは田舎だ、馬鹿野郎。 聞こえてくるのは己の自転車の音のみだ。 ついでにカエルの声も聞こえる。 そんな季節だっけ。 ここを自転車で走行すると、毎回ある言葉が脳裏に浮かぶ。 中1のとき、出会ったばかりとはいえ、すっかり親友だった彼女が、ここで発したあの言葉。 『月って一生自分で輝けなくて悔しくないのかなってたまに思うの。でもさ、こう思わない?他人(太陽)から光を受け取って輝くことが、彼女なりの輝き方だって。 彼女にとって太陽が全てなんだろうな。 彼がいないと輝けないんだから。それでもそれをちゃんと認めて、素直に光受け取って輝けるのって超かっこよくない?』 「ばか……」 気づけばそう呟いていた。 周りに人がいなかったのは承知していたので、焦りはしなかったが。 そのとき私が勧めたのだ。 『小説家なったら?才能あるよ』 彼女は心底驚いた顔をして『ええ?』とか間抜けな声を出していたっけ。 『私国語苦手だよ?』 『関係ないよ。……いや、あるか。でも今の超良かった。なんか良かったよ、それ。目指してみたら』 適当なこと言いやがってた、そんな当時の私。 彼女は『えっ。嬉しいな。ほんと?』と驚きから喜びに表情を変えていた。 よく顔の動く奴だ、と思ったのを覚えている。 それから、つぶやき系のアプリ入れて、ポエムなのか詩なのか、どっちもなのか、よく分かんないけど、彼女はそのときからそれを、毎日投稿を続けてきた。 初めは誰も興味を示さなかった。 『もうやめちゃおっかな』と彼女が笑うたびに私は『続けたほうがいいよ!温めた方がいい才能だよ、それ』といい加減なことを言ってきたものだ。 ずっと努力してきて、1日の投稿数も増やして、頑張ってきたのだ。 そんな、彼女なのだ。 次第にユーザー達も彼女を認め、今では彼女のフォロワーは2万人にまで伸びた。 2万を達成したときは2人で泣いて喜んだ。 『頑張ってきて良かったあああ』と、2万というまあまあキリの悪い数字に喜んだものだ。 その光景とともに、別の記憶が脳に浮かび、思わず腹の底から怒りが込みあげた。 今朝起きて、なんとなく例のつぶやき系のアプリを開いてみたら、とんでもないことになっていたので、そのときは拍子抜けした。 拍子抜けした、というより『は?』と、まだ理解できていなかった部分もあるように思う。 彼女の新規投稿がこんなものだったからだ。 『コンクール、大賞は逃したけど準大賞を取ることができました。いつも入賞すらしなかったから嬉しかった。でも、その大賞を取った作品読んでみたら、なんだか凄く気分が悪くなりました。あれが大賞で、私の作品が準大賞なのは、正直納得いきません。皆さん、大賞の作品、読んでみてください。読んだあと、皆さんもきっと、私に共感するでしょう』 心臓が、ひとつ跳ねた。 (炎上する、) そんな予感に私は冷や汗をかく。 誰にも見られていないことを願っていたが、そんなの無謀だった。 その投稿はみるみるうちに拡散され、ごうごうと燃えていた。 『準大賞のくせに大賞に文句つけてて笑った』 『準大賞な理由はこれ』 『わざわざ投稿するあたり、馬鹿すぎる。』 みんな、好き勝手いうものだな、と思いつつ、これは確かに、思うかもしれないと、ちょっと納得してしまったりした。 彼女の投稿についていたコメントを半目で見ていると、こんなものまで流れてきた。 『この人の作品見たんだけど、すごくつまらなかった。性格の悪さが滲み出てて胸糞悪い作品だった』 正直、吐き気を催した。 あの作品は、彼女のすべてだった。 今までの努力、そのものだった。 性格の悪さ?勝手なこと言ってんじゃないよ。 何が分かるんだクソ野郎。 そんなことを心のなかで呟いていると、画面がぼやけた。 いつのまにか、涙が目に溜まっていた。 溜まった涙に名前をつけるなら、それは紛れもない『罪悪感』と『怒り』だったと思う。 *** 両手に力を入れ、ブレーキをかける。 それから足をつける、はずだったのだが、足がつかなくてよろけた。 つま先がついてやっと安心。 「サドル高ぇんだよ、ばあか。」 この場合、力丸の非は一切ない。 私は力丸の愛車を家の真ん前に停め、上を見上げた。 インターホンを押したら、出てきてくれるだろうか。 朝から何度も電話をかけたが、出てくれることは一切なかった。 直接行くのが1番なんて、ずっとわかっていたが、勇気など、いつでも出るものではない。 自転車から玄関へ、そこまでの距離を歩くためには、自分の気持ちを無視することが大切だった。 気後れしないように、勢いのままにインターホンへ足を動かす。 やっとインターホンの前にたどり着いた私の指が、インターホンに触れる。 ぎゅっと目を閉じ、指先に力を込めたとき、インターホンの音よりも先に、ドアの音が聞こえ、顔を上げる。 首を右に曲げてみると、中途半端にドアが開き、そこから彼女が上目遣いでこちらを覗いていた。 「こんばんは……」 言葉が唇から溢れた。 なかなかに馬鹿だったと思う。 彼女は少しびっくりした様子で、「こんばんは」と言われたら「こんばんは」と返すというプログラムが作動したように、つられるままに「こんばんは…」と言った。 私は言いたいことが喉の奥で絡まるのを感じる。 (えっと、何言いたいんだっけ――) 炎上したことを慰めたいのか、炎上するような投稿を上げた彼女を怒りたいのか。 それとも、謝りたいのか――。 「馬鹿じゃないの?……何してんのよ」 結局、怒ることを選んだ。 でもそれは私にとって、1番選びたくない選択だったように思う。 同時に、その選択が1番楽だと、わかっていたのかもしれない。 でも、本当に選びたかったのは多分――。 下唇が震えるのがわかった。 ドアがまた、もう一度音を鳴らし、今度は大きく開いた。 彼女とお泊りをしたときに見たときと同じような、ラフなパジャマ姿の彼女が苦笑いをして、こちらを見ていた。 「あの投稿、何よ……。消しなよ、」 言葉が力を為さなくて、か弱いものとなってしまった。 本当に言いたいのはこれじゃないと、わかっていたからだ。 彼女は場違いに笑みを作って、「はは」とこれまたか弱い笑い声を出した。 「あのアカウントは、あの作品は……あんたの全てじゃないの……?何してんのよ……。何も知らないネットの奴らに、好き勝手書かれて……私は許せないよ、」 説教、それをしたいわけじゃない。 罪悪感が私を刺殺してしまいそうだった。 彼女が口の端を引くのがわかる。 音すら聞こえてきそうなほど、それがはっきりと目に写った。 「いいの」 「良くないよ…」 今になって自転車の痛みが足に走る。 「いいんだってば」 何を根拠にそう言えるのか、私にはさっぱりわからずにいた。 彼女は目こそ合わせなかったが、口角は意地でも下げようとしなかった。 「炎上するって、わかってたよね」 「…うん」 「じゃあなんで、」 「大切だったからだよ」 やっと合った彼女の目は、大きな黒目がちらちらと動いていた。 あまりにも、優しい目だった。 私は言いたい言葉が多すぎて、喉から出る前に絡まってしまった。 ただ、何一つ出てこない。 黙り込む私に彼女がまた、穏やかに笑った。  1度、下を向き、笑顔をもう一度作り直し、その笑顔を大切にしながら、彼女は口を開いた。 「大賞おめでとう」 射抜かれたような感覚だった。 腹の奥を両手で包まれたかのような感触も走る。 例えるならば、「コーヒーなんて飲むもんか」と提唱していた友達が、月日が経った頃、ちゃっかりカフェでコーヒーを頼んだときの、ちょっと裏切られたような感覚。 でもそれは心のうちの10%も占めないほどの、小さな感情で、あとは、罪悪感という黒い黒い9割が心を覆っていた。 心臓が暴れた。 頭の中がこんがらがる。 私はさっき、選択を確実に間違えた、そう実感した。 この話は、私からすべき話だった。 彼女にそれを気づかせるのは彼女じゃなくて、私であるべきだった。 彼女に、とても残酷なことを言わせてしまった。 違うんだ、そうじゃないんだ。 私は、私は、 頭の中で言葉が準備される。 でも、なんだか全部が気持ち悪くて、吐き気とめまいが起こりそうだった。 「作品、読んだよ」 私は何とも言えず、首を振った。 何を意味したかったのかは、私にもわからない。 「投稿ではああ言ったけど、納得してる。すごく……」 「良くない!あんなの全然良くない…。絶対あんなのが大賞獲るべきじゃなかった、」 彼女の作品のほうがずっとずっといい作品。本気でそう思った。 だからコンクールに応募したのだ。 彼女の作品が大賞を獲るだろう、だから、せっかくだし応募するだけしてみよ、ってそんな感覚で――。 今はあのときの自分をひどく憎んでいる。 彼女の全てを燃やしたのは、マッチ棒を持っていたのは、誤魔化しようがない、私だ。 「いいんだよ。あの作品、色んな人に読んでほしいなあ。すごく良かった」 のんきに笑う彼女がよくわからなかった。 投稿ではわざわざああ言って自分のすべてを燃やし、今はこうして評価して笑っている。 「なに、言ってんの、?あんた全部燃えちゃったじゃん…。作品も、大切にしてきたアカウントも。作家としての名前も全部、。なのに何で笑ってんの、」 「わかってないなあ」 相変わらず、のんきな顔で、暗くなってきたこの空気に目を細めた。 「私の全ては、あの作品でも、あのアカウントでも、作家としての人生でもないよ」 「…え?」 彼女は、んふっと鼻から笑ったら「もう暗くなったね」、そう言ってドアノブに手をかけた。 「門限8時でしょ?もうすぐ過ぎちゃうよ。わざわざありがと。ばいばい」 止める力もわかなかった。 (ちょっと待ってよ) そんな声も、出なかった。 アホみたいに一点を見つめて、暗くなった辺りにやっと気づいた。 思考が止まり、「ああ門限、」と本能に動かされ、自転車にまたがった。 いま来た道を進む。 ちょうど、月の方向へ進む。 田舎のここらでは音がほとんどない。 自分の漕ぐ自転車が、かちゃかちゃというだけだ。 音のない時間が、刻々と過ぎていく。 ちょうど彼女が月の話をしてくれた場所を通った。 なんだか、月が目に映ると、余計に腹立たしくなった。 その怒りを奥歯で噛む。 それでも足りなくて、立ち漕ぎで紛らわそうと思い、お尻を上げる、そのときだった。 道の真ん中に生えていた硬い雑草に自転車のタイヤが乗っかる。 慌ててバランスを取ろうとした、が、そのときにはもう遅かった。 かごの中でスマホが飛び跳ね、車体がガタンと横倒しになった。 投げ出された私は、自転車に押しつぶされるかのように倒れた。 足に痛みが走る。 「ああこれ、血が出てる、」 足元を見ると、擦りむけた膝が目に写った。 そうだった、私、自転車漕ぐの下手だったんだ。 毎回この自転車に乗ると転けると言うけれど、これは私の運動神経の問題だったのだ。 そのまま「あちゃー」と空に目を向ける。 そうすると、にこやかなほどに笑った月と目があった。 暗い中、怪我をするという絶望的な場面では、同じく絶望的な記憶が頭に浮かぶことがある。 まさに私の頭の中には今、とある記憶がポツンと浮かんでいた。 ああこれは、彼女の投稿の記憶…… じゃない。 納得しそうになって、急に手に汗をかいた。 違う違う、似てる、似てるけど彼女の投稿じゃない。 痛みも忘れて立ち上がる。 そうだ、そういえば、今朝、こんな投稿を見た。 『準大賞の作品、読みました。すごく良かった。大賞の作品も期待して読みました。しかし、それを読んでみたら凄く気分が悪くなりました。これが大賞か、と納得行かない気持ちが芽生えました。これが大賞であの作品が準大賞だなんて、信じられません』 これ以外にも、たくさん、確かにたくさん、私の作品は散々言われていた。 『大賞と準大賞入れ替えた方がいい』 『大賞つまらん…』 『準大賞のほうが良かったです』 私の作品は審査員に媚びを売るような、審査員向けの作品で、彼女の作品は素直な気持ちを綴った、読者向けの作品だった。 そのため、そのアプリ上では圧倒的に彼女の作品が上げられ、私の作品が下げられていた。 悲しい気持ちがあったかはわからないけど、あまり気にしていなかった。 私もその通りだとおもっていたから。 そのときはっとした。 月がさっきにも増して光を発しているように見えた。 「もしかして、」 彼女は私と私の作品を守るためにあの投稿をした? 私の作品への酷評をたくさん見て、守ってくれた? 自分を下げて私を上げた? そう考えると、そうとしか思えなくなってきた。 『私の全ては、あなたです』 いつの記憶か、そんなことを言われたことがある。 ああ、そうだったのか。 私は膝から地面へと堕ちた。 黒い海に投げ出されたかのようだった。 でも手の中には暖かい感情があった。 彼女のすべては、あの作品でもあのアカウントでも、作家としての人生でもなかった。 彼女のすべては、私だったのだ。 正確には、私の言葉だった。 彼女はまるで月のようだった。 自分の輝きを見いだせず、ただ生きる日々。 そんなときに私が、言ったのだ。 『それ、才能だよ』と。 それが光となって彼女に輝きを与えた。 私の言葉は、太陽となったのだ。 彼女は月の如く、それを認めながら、小説家を目指した。 太陽がないと輝けない月だと、ちゃんと気づいていたのだ。 だから彼女のすべてである太陽が沈みつつあったとき、迷わず自分が沈んだ。 太陽の輝きを失なわせぬように、自ら影を被ったのだ。 「馬鹿。ばか、ばか。馬鹿野郎……。」 目から透明なものが落ちた。 月が涙を照らす。 涙は光を持って、地面へ垂直に落ちた。 「そうだよ。そうだよ……。あんただって、その輝き方で、誰かに光を与えてるんだよ……。沈むな、沈むな、沈むな…………。」 私は多分、彼女に光を貰っていた人たちのうちの1人だ。 私は門限なんて、あたりの暗さとかなんて気にせず顔を覆ってその場に座り込んだ。 まだ落としてないメイクがぐちゃぐちゃになっているのを感じる。 月に届くまでの大きな声で泣く。 馬鹿野郎と叫びながら。 「かっこよすぎだろ……。」 私は、あなたの輝き方が好きだ。 このことを、小説に書きたくなった。 多分私は彼女に正直な気持ちを話せないから。 物語を綴って、彼女に届けたい。 あの大賞の作品は取り下げてもらおう。 それは彼女への罪悪感からではない。 ただ、納得できないのだ。 彼女の話を、文字に起こしたい。 輝く月の、眩しい話を、誰かに聞いてほしい。 私は立ち上がり、また自転車にまたがる。 足の痛みなんてもう知ったこっちゃない。 私は早く帰って、彼女の輝きを書かないといけない。 ぐんぐん進んだ。 月が目の前に小さくおいてあった。 夏が終わる。 太陽よりも月が活躍する季節がやってくる。 月が燃えた、夏の終わり。 「ありがとう」 これは、また、本人に言おう。 彼女の名前は美月(みづき)で、 わたしの名前は、日向(ひなた)といった。
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