急変

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 病室に飛び込むと二人の看護師が陽毬ちゃんの胸骨圧迫(心臓マッサージ)と換気を行っていた。  でもそれ以上に衝撃的だったのは、病室の壁際にあの死神が立っていた事だ。多分、私以外は彼が見えないのだろう。二人の看護師も安曇先生も彼には見向きもしない。でも今は死神に関わっている時間はない。早く陽毬ちゃんを蘇生させないと。  安曇先生は部屋に入ると直ぐに除細動器の画面を見てくれた。 「良かったVFよ。除細動出来るわ」  安曇先生の声に少しだけ安堵の溜息が出た。頷きながら陽毬ちゃんの病院着をはだけると除細動器のパドルにジェルを塗った。 「真理さん、百五十ジュールよ」 「了解です。除細動します。みんな離れて!」  胸骨圧迫と換気の看護師がベッドから離れると、私は陽毬ちゃんの右の乳房の上と左の脇腹にパドルを当て充電ボタンを押した。充電完了のブザーが鳴る。 「最終波形はVFよ!」  安曇先生が確認してくれる。 「はい、それではショックを入れます!」  その瞬間、陽毬ちゃんの身体がビクンと跳ねた。 「ROSC(心拍再開)したわ!」  安曇先生のその声に私は安堵の溜息を漏らしていた。
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