朗報

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朗報

 その時だった。病室のドアが開いて安曇先生が戻って来た。彼女の口からは想像もしてなかった言葉が出て来た。 「真理さん朗報よ。安曇薬品の木本社長が治験の実施を承認したわ」  私は彼女のその言葉を理解出来なかった。 「えっ? 安曇先生、それはどう言う意味ですか?」  彼女が微笑んだ。 「社長から貴女にメッセージが届いている筈よ」  急いでスマホを確認すると確かに社長からのメールが届いている。そこには……。 「本当だ、陽毬ちゃんに限定した治験の承認通知だわ。安曇先生、どうやって?」  彼女が更に口角を上げる。 「父にお願いして木本社長を懐柔してもらったの」 「先生のお父様?」 「うん、私の父は安曇薬品の親会社、安曇重工の会長だからね」  そう言うと彼女は満面の笑みを私に向けてくれた。  一方で壁際の死神の表情が曇った様な気がしたが、私はそれを無視して陽毬ちゃんへのクォンタムの投与準備の為、病室から駆け出した。
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