エピローグ

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エピローグ

 陽毬ちゃんの家族の同意も得た私達は、試作棟のCNRTで陽毬ちゃんの血液からCRTを抽出し、それから六時間を掛けて血漿(けっしょう)と混合した50ccの癌治療薬クォンタムを生成した。  そして陽毬ちゃんの左大腿動脈からカテーテルを脳幹近くの血管まで入れる処置をして、彼女をマグネットナイフのベッドに寝せてクォンタムの投与を開始した。『ウーン』という作動音を響かせるマグネットナイフが脳幹に磁力を集めクォンタムが集中的に脳幹に留まっている事が簡易造影検査でも確認できた。  陽毬ちゃんの処置は三日間に渡った。その夜、陽毬ちゃんの部屋を訪れると、マグネットナイフのベッドで治療を受ける陽毬ちゃんの横には死神が立っていた。  彼の声が頭に響いて来る。 (これは驚いた。今度はお前が陽毬の運命を変えたのか?) 「そうよ。十年前に私と安曇先生が実践したでしょう? 今度は私と陽毬ちゃんで運命を変えるわ」 (そうか。僕の任務はここまでだな……)
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