癌治療薬クォンタム

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癌治療薬クォンタム

 その日、私は阿蘇に在るAAMC(安曇先進医療センター)のヘリポートで訪問者の到着を待っていた。  少しするとヘリが上空に現れ、頭上を半周しながら着陸した。  ヘリから懐かしい人物が降りて来て、嬉しくなった私はに駆け寄った。 「安曇先生! ご無沙汰しています!」  それは高校の時に私の命を救ってくれた安曇愛理先生だ。本当にお会いするのはあれから十年振りだった。先生が満面の笑みを向けてくれる。 「真理さん、本当に久しぶり。すっかり大人の女性になったわね。ああそうか、ドクター高橋って呼ぶべきかな?」 「真理でいいです。先生、アメリカから私の研究を見に来て下さってありがとうございます」  安曇先生は五年前に渡米し、今はスタンフォード大学で勤務されている。 「ううん、私の研究室でも話題になってるわ。真理さんの画期的な癌治療薬の開発。もう少しなんだって?」 「はい、癌治療薬『クォンタム』はステージⅡの開発が終了していて、動物実験でも一定の成果が出ています。詳細はクォンタムの試作設備CNRTをお見せしながら説明します」  うんと笑顔で頷いた彼女を、私は試作棟へ案内した。
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