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券売機から購入したチケットを2枚取り出したちよりは、人混みの中指宿を探しキョロキョロと辺りを見渡した。
どこを見渡しても人・人・人の中、長身且つ美が発光している指宿を見つける事はそんなに難しいことではなかった。
少し離れたところに見たこともないサイズのポップコーンと2人分のドリンクが入ったボックスを持った指宿が辺りをキョロキョロ見渡して、ちよりのことを探している。その様子が少し間抜けでちょっと可愛いな、なんて思ってしまう。
「指宿さ…」
ちよりが声をかけようとしたその時だった。
「ちより?」
突然何者かに肩を掴まれて、声をかけられた。
振り返ったちよりは顔を強張らせる。
「…裕翔!?」
東京に住んでいるかつての恋人との再会に、動揺が隠せない。なんでここにいる?なんで平然と声をかけられる?いくつもの何故が頭に浮かんで混乱する。顔も見たくなかった。それでも心の中から消えてくれなかった存在に、ちよりの足は竦んでその場から離れることができない。
「やっぱりちよりだ。遠くから見てて似てるなって思ってたんだ。」
ちよりは返す言葉が浮かばず、俯いて黙り込んだ。
「俺、先月こっちに転勤になってさ。ちよりに会えたらいいなって思ってたんだけど、こんなに早く会えるなんて。運命ってあんのかな。やっぱり離れるべきじゃなかったのかも」
そう言って裕翔が笑うので、思わず顔を上げ、鋭く睨みつけてしまう。
「…怖い顔しないでよ。俺、めちゃくちゃ後悔してる。あの時の子とはあの夜で終わってるんだ。信じて欲しい、あれからずっとちよりの事考えてた。」
どんな言葉を紡がれても、一度の裏切りは重く、ちよりの心には届かなかったが、会話を続ければ続けるほど、裕翔の言葉はちよりを削っていく。
「お、ちよりちゃん発見!…あれぇ、お知り合い?」
重苦しい空気の中、凄まじく大きな光が2人の間を割いた。
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