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「…指宿さん!すみません、探してくれてましたよね」
いつもは疎んじている指宿が天の助けのように思えて、脇目もふらず縋り付きたい気持ちを必死に抑える。
「え、もしかして彼氏?」
裕翔は指宿とちよりを交互に見やった。
「いや、あり得ないか。こんなイケメン。」
ないない、と笑う裕翔に指宿はズイっと近寄る。
「え?彼氏どころか婚約者ですけど?おたくは?ちよりの何?」
普段の温厚な指宿とは一転して高圧的な態度と突然の呼び捨てにちよりは驚きながらも間に入る。
今にも彼が買ったばかりの飲み物を放り出して掴み掛からんとする勢いだったからである。
「指宿さん、行きましょう。この人は昔の知り合いでたまたま会っただけです!」
指宿のドリンクを急いで取り上げ、その背中をぐいっと押す。
「ちより、婚約者とかそんな分かりきった嘘、信じてないから!そんな事より着拒取り消してよ。また会いたい。俺、諦めてねぇよ。」
背中で裕翔の切実な声が聞こえた。
「あのさ、こんないい男とデートしてるとこによく割って入れんね。頭大丈夫?」
指宿は裕翔の方を振り向きながらトントン、と指で頭を小突くと
「二度と面見せんな、小物」
と言い、ちよりの腰に手を回して上映スクリーン目指して歩いて行った。
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