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「お風呂、ありがとうございました。温まりました。」
ちよりが風呂から出てリビングに入ると、机の上に乱雑に並んだサンドウィッチやおにぎりを眺めて思案している指宿の姿があった。
「…ちよりちゃん、その格好やっぱエロいな」
振り返った指宿は、スウェットをワンピースのように1枚でダボっと着るちよりを、上から下までじっくりと眺めながらニヤついた。
「はっ倒しますよ、おっさん」
風呂から上がり、先程より少し正気を取り戻したちよりの毒舌が、指宿にクリーンヒットする。
「2個しか年変わんないじゃん。ほんと容赦ないよねぇ」と泣くようなジェスチャーをしながら思い出したかのように「あ、これさぁ。下のコンビニでご飯買ってきた。お腹空いたでしょ。」と言って机の上を指差した。
何がいいのか分からなかったから適当に選んだと言った指宿の言葉通り、種類もジャンルもバラバラで彼が慌てて買ってきてくれた事が手に取るようにわかる。
「ふふ、ありがとうございます。お腹空きました。有り難くいただきます。」
そう言いながらちよりはツナマヨネーズのおにぎりを手に取った。
「あ、それとちよりちゃん。社長に電話しときな。今日はもう帰れないよ。」
え!?と驚くちよりに、指宿はくいくいっとテレビの方を指差した。
急なゲリラ豪雨は朝方まで続き、外出の危険性を訴えるニュースが流れている。
「ま、まじかぁ…」
ちよりの声はヘナヘナと力が抜けていく。
「マジです。」
指宿はキリッとそう言うと、ちよりのスマートフォンに目をやった。
「連絡は早い方がいいよ。安心して、俺はここのソファーで寝るから。ちよりちゃんは寝室のベッド使ってもらうつもりでいるし。やましい事なんもないから。」
ぐぬぬ、と言葉を飲み込んでスマートフォンに手をかける。画面に祖父の連絡先を表示させると、そっと通話ボタンを押した。
「おじいちゃん、ごめん。凄い雨降ってきちゃって。今日は美羽の家に泊まらせてもらう。うん、うん。じゃあね」
電話を切ったちよりに
「あれぇ?俺ん家って言わなかったんだぁ?やましい事でもあんのかなぁ?」と指宿がニヤニヤと笑う。
「ない!五月しゃい!!」
「うるしゃいって。動揺しすぎでしょ」
指宿は腹を抱えて笑いながら、机の上のサンドウィッチを手に取った。
「夜に備えて、ちゃんと腹ごしらえしとこぉっと」
ご機嫌な指宿は、ハムサンドをガブリと頬張り、口についたマヨネーズを指で拭いながら、一心不乱におにぎりを頬張るちよりを見て笑った。
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