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こんなに高級感のある寝具に包まれて眠ることがあっただろうか。体圧を分散させるマットレスのフィット感は、ちよりの知っているそれとは雲泥の差があった。
おまけに指宿 千晃の高貴で甘い香りがダイレクトに鼻腔を突いてきて、全く落ち着かない。濃縮還元指宿を再びくらう事になるとは思ってもみなかった。
指宿との約束通り、ちよりは彼の寝室を借りて眠りにつこうとしていた。
が、指宿本人がいないこの環境でも其処彼処に彼の空気を感じてしまい、安眠することは不可能だと判断した。
目が冴えてくると、昼間の出来事が鮮明に脳裏を過ってくる。
この2年間、裕翔のことを思い出す度に相手を恨んで自分を責めた。自分が家族を守りたかった気持ちを否定された気になったし、愛されなかった悲しみに打ちひしがれた。
今更運命だなんて陳腐な言葉を持ち出されて、なんで私の心が動くだなんて思っているんだろうか。別れた女はいつまでも自分を好きに決まってるだなんて盲信しているんだろうか。舐められたもんだなと腹立たしく思う気持ちと、そんな男の事で一日中動揺している自分の弱さが悔しくて、悲しくなってくる。
混沌とする思考を、まぁもう二度と会うことはないかと無理矢理結論づけると、ちよりはベットを軋ませて立ち上がり、指宿の寝室を出た。
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