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リビングにはまだ明かりがついていた。
扉を開けて中に入ると、眼鏡をかけた指宿が机に向かってノートパソコンのキーボードを真剣な顔をして叩いている。ドアが開く音でこちらに気づき、真剣な眼差しからぱっと顔が明るくなった。
「どしたの、ちよりちゃん。寝られない?」
「はい…お水いただきたくて。」
指宿はオッケーオッケーと言いながら立ち上がると、こちらにやって来る。
「指宿さんも眠れなかったんですか?」
「俺?あぁ、俺はちょっと仕事してた。高梨さんとこで学んだ事、応用できそうな商品思いついてさ。会社で提案したくて資料まとめてたとこ」
指宿はそう言いながら冷蔵庫の方まで歩いていくと、ミネラルウォーターのペットボトルを一本取り出してちよりに寄越した。
「はいどうぞ。ごめんね、飲みかけじゃないから間接チューにはならないけど」と笑う。
「いや、その方が助かります」
さっきまで仕事の話をしてたときは格好良かったのになんで結局こうも別人の様に軽いんだこの人は、と脳内で彼を責めた。
ムスッとするちよりに、くっくっと笑いながら、彼女の顔にかかった髪を払って指宿がじぃっと瞳を見つめてくる。
「…なんでしょうか?」
飲んでいるところをまじまじと見つめられて、たじろいでしまう。
「いやぁ。…まだ元気ない?」
あぁ、昼間のこと。やっぱり気になってるよな。全然上手く誤魔化せてなかったし、と思いながら
「めちゃくちゃ元気ですよ。これ全部飲み干しちゃえそうなぐらい元気です。」と空元気で返した。
「無理しないでいいよ。アイツなんでしょ、ちよりちゃんが大変な時に浮気してたクソ野郎」
なんでその事を知ってるのかと驚いた顔で指宿を見る。
「ごめん、真山さんに聞いた。探る気は無かったんだけど、知られたくない事詮索してごめん。」
あぁ…と納得した声が溢れる。今更誰に知られたところでどうという事はないけれど、なんとなくこの人に同情されるのは嫌だなと思ってしまった。
「ねぇ、ちよりちゃん。やっぱり今日一緒に寝ようか。」
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