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カーテンの隙間から朝陽が差し込み、ちよりはその明るさを感じ取ってゆっくりと目を開けた。
昨夜指宿と話した後、不思議とそのまま眠れてしまったのだ。
起きて帰り支度でもするかと、寝ぼけ眼で何度か瞬きをすると、ある違和感を感じた。
体が寝具以外の何かに包み込まれている。
はっきりとしていく意識の中で、恐る恐る横を見ると、ちよりの体は指宿にすっぽりと抱き竦められていた。
「!◯%&?△■?」
「…ん〜?」
寝ぼけた指宿は更に腕に力を込めて、ちよりを抱きしめてくる。寝ている人間相手に自分はこんなにも無力なのかと脱力しそうになるが、必死に抵抗を続ける。
「指宿さん!起きて!!離して!」
ジタバタと暴れるちよりに、指宿の意識もやっとこちら側に戻ってくる。
「ん…ちよりちゃん?おはよ」
ふにゃっと笑ってはいるが、まだ完全には目が覚めていないらしい。
「なんで?なんで一緒に寝てるんですか!」
指宿は目を擦りながらゆっくりと起き上がると
「あれぇ?なんでだろ…あ、昨日寝ててトイレに起きた後、癖で寝室に戻ってきちゃったのか。ごめんごめん…」
ごめんという言葉とは裏腹に謝罪の意は感じられなかった。
「泊めてもらったことは感謝してます。けど、これは駄目です」
「いや、ほんとごめんってぇ」
目をしょぼしょぼとさせながら、指宿はひたすら謝ることしかできない。
「とりあえず着替えたら帰りますので」
「おっけぇー。俺も駅まで送ってくねぇ」
「結構です」
「いや、それぐらいさせてよ。ね?」
上目遣いでそう懇願されると断れない。本当にずるいんだよなぁ、この人はと思いながらちよりは「わかりました」とムスッとしながら答えるのだった。
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