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きみこの一言に指宿は驚いた顔をして、ちよりの方に視線を向けた。
「え、俺童貞なの?」
「いや、違うでしょ。」とちよりが呆れながら否定するので、今度は真山の方を見る。
「僕、童貞なんですか?」
「知らねぇよ。俺に聞くな。」
真山はきつい口調とは裏腹に、急に始まったアダルトな話題に目が泳いでいた。そんな3人のやり取りを見ていたきみこが、口を開く。
「ちより、源人。2人で修二郎ちゃん家まで送ってやんな。うちの店に酔っ払いはいらないんだよ。」
きみこに促されて修二郎を見ると、顔を真っ赤にして眠りに着こうとしているところだった。
「おじいちゃん、こんなところで寝ないで」
「社長、送ります。背中乗ってください」
ピクリとも動かない修二郎を2人がかりで無理矢理真山の背中に担がせた。
そんな2人を見て「真山さん、僕が家まで送りますよ」と立ちあがろうとした指宿に
「あんたはここに居残りだ。アタシと2人で熱〜い夜を過ごそうじゃないの」ときみこの待てが入る。
きみこの言葉に重ねるように「慣れてるんで、私たち2人で連れて帰ります。折角なんで指宿さんはきみこさんとのお喋り楽しんでください」とちよりに制されてしまい、指宿は不服そうな顔をした。
「きみこさん、お支払いお願いします」
「修二郎ちゃんにつけとくからいいよ。」
「…すみません、おじいちゃんに言って聞かせときます。ご馳走様でした。」
ちよりは深々と頭を下げると、おやすみなさいと言いながら、修二郎をおぶった真山と外に出て行ってしまった。
「やっと2人っきりになったね」
きみこは指宿の目の前にあった空のグラスを手に取り、そこにブチュっと勢い良く口付けした。
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