5話 小夏

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台所へ向かう廊下で、指宿の声が微かに聞こえてくる。珍しく感情的に話しているように思えた。 「放っておけるわけないだろ!今すぐ行くから!」 そう言った彼とばったり鉢合わせてしまい、思わず視線を逸らした。 「あ、ちよりちゃん…。ごめんね、ご馳走様でした。あと俺今日外出るから晩ご飯なしで大丈夫。」と言い、バタバタとリビングの方へ走って行ってしまった。 先日のゲリラ豪雨で家に泊めてもらった日の帰りにもこんなことがあったなとふと思い出す。 何か事情はあるのかもしれないが、あまり詮索するのもな。それにもう彼には関わらないと決めたではないか。 ちよりは手に待っていた皿を手際よく洗うと、台所を出て仕事へ行く準備に取り掛かった。
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