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「…ポメ?」ちよりはキョトンとした顔で指宿を見つめる。
「そ。実家で飼ってんの。家族同然の愛する者」
指宿は髪をガシガシとかきながら少し照れながらそう言った。
「おじいちゃん、ややこしい言い方しやがって。絶対わざとだな…」と1人でブツブツ悪態をつくちよりを他所に、指宿は話を続けた。
「最近吐いたり食欲ない事多いって妹から連絡あってさ。で、今日朝からぐったりしてて動かないって電話があったから急いで実家戻って病院付き添ってたの。」
「どうだったんですか?」
「風邪の一種みたいで、点滴してもらったら大分落ち着いた。心配だから夜まで付き添ったけど、安定してるから帰ってきた。」
「良かった…」
「あのさ、ちよりちゃん。」
指宿はちよりの視線の位置まで屈み、顔を近づけた。
「もっかい聞くけど、俺のこと好きでしょ。」
ちよりはぶんぶんと勢いよく首を横に振る。
「本当に?今日1日ずっと俺のこと考えてくれてたのに?」
「昨日あんなことがあったから、ムカついて色々思い返してただけです。」
「そっか…じゃあさ、俺もうちよりちゃんのこと諦めて他の人と縁談進めてもらおうか?」
「え?」
「ちよりちゃん嫌がってるのに無理に襲って怖い思いさせちゃったし、これ以上一緒にいるのきついでしょ」
ちよりは黙って俯く。
「今まで強引なことしてごめんね」そう言って指宿はちよりから離れて歩き出す。
「待って」と咄嗟にちよりは指宿の袖口を掴んだ。
「なに?」
引き止めてはみたものの、うまく言葉がでない。
「おーい、ちよりさーん?」
指宿はちよりの顔の前で手の平をヒラヒラと振る。
「何もないなら行くよ?今日ちょっと疲れちゃった。」
そう言うと指宿は掴んだちよりの手をそっと解こうとした。
ちよりは咄嗟に指宿の胸倉を掴むと、自分の方に引き寄せた。
2人の唇が重なり合う。
数秒触れ合った唇が離れると、ちよりの顔は真っ赤に染まっていた。状況を飲み込めない指宿は目を白黒とさせている。
「まだわかんないけど、今はこれが精一杯です。…おやすみなさい」
ちよりは慌てて自室に引き返して行った。
その背中を指宿は呆然と見つめる。
指宿は手で口を覆うと、顔を真っ赤にし
「いやいやいや、いやいやいやいやいや…」と慌てふためいた。
人生で感じたことが無いほど、心臓が煩くて痛くて、堪らない。
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