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6話 グイグイいけない指宿さん
指宿 千晃27歳、乙女座のO型。俺は今、高梨ちよりから全力で逃げている。
なんでこんなことになっているのかは、自分でもよく分かっていない。
◇
「指宿さん、おはようございます」
AM10:00。高梨製作所の機械前でちよりに声をかけられたのは、始業して少し経った頃だった。
昨夜ちよりに不意打ちでキスをされてから、己の鼓動が煩く、まともに顔も合わせられそうに無いので黙って家を出て、黙々と業務に打ち込んでいたのに彼女の方から出向いてくるとは思ってもみなかった。
「朝ご飯、いらなかったんですか?」と顔を覗き込んでくる彼女をチラッと伺うと、どう見てもキラキラとエフェクトがかかっており、眩しすぎて直視出来そうもない。
「ははは、今日はなんか食欲なくて…ごめんね、ちゃんと言わなくて。」
これ以上話したくなくて、ちよりに背を向けまた作業に打ち込む。
「指宿さん、調子悪いですか?」そう言いながらちよりは、おでこにそっと手を当てた。
「ひやぁ!!」と思わずその場で飛び上がり、周りをびっくりさせてしまう。
「!?ちょっと、本当に大丈夫ですか?今日お休みにしますか?」困ったようにそう言う彼女に、「お構いなく!」としか言葉が出なかった。
いつかもこんなやりとりをした気がするが、その時とは完全に形勢が逆転している。
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