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7話 暗夜に遠吠え
「おい、何してる」
絶望したちよりに、聞き覚えのある声がする。ただ、その声はいつもの優しく柔らかい声色とは違い、随分と低くこちらを威嚇している様でもあった。
「指宿さん…」
ちよりから安堵の声が漏れる。
「またお前かよ。邪魔だ、どけ。」と尚も強引に腕を引っ張る裕翔の前に立ちはだかった指宿は、彼の手をちよりから強引に引き剥がした。
「邪魔なのはどっちだよ。この子の人生から邪魔なのはお前なんだよ。失せろ。」
指宿は裕翔の顔面スレスレまで近づき、凄むと「行こう」と言いながらはちよりの肩を抱き、家の方に歩き始めた。
「おい、ちょっと待てや」
そう言い終わらない内に、裕翔は指宿の肩を掴むと、こちらに向かせて思いっきり頬を拳で殴った。
ちよりの短い悲鳴が、場に響く。
「指宿さん…指宿さん…!」
殴られた衝撃でその場に倒れ込む指宿に、ちよりは駆け寄ろうとする。
「駄目、向こう行ってて。こいつ話通じないみたい。」
指宿はちよりを制すると、ゆっくりと立ち上がっり、「なんでこんなヤバいやつと付き合ってたんだよ…本当心配になるんだけど。」とボソッと呟き、裕翔の方へと視線を向けた。
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