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指宿は抱きしめたちよりごと、その場に倒れ込んだ。
「指宿さん!」
視界が指宿に覆われていて、よく見えない。ちよりの不安で溢れる気持ちが涙声に変わる。
「指宿さん!大丈夫ですか?」
うん、と小さく返事は返ってきたが、見えていなくとも指宿が良くない状態だということは察しがついた。
「おい、ちより。何してんの、早くこっち来いよ。」
裕翔がこちらに近づいてくる。誰か助けを呼びたくても、声が震えて上手くいかない。
この悪魔の様な男の前で、このままでは2人とも無事では済まないのではないかと良くない想像がちよりの頭を駆け巡る。
「おい、あんましつけぇ事してっと警察呼ぶぞ」
緊迫した空気を、真山の声が破った。
「確かにその男はいけ好かねぇけどなぁ。殴んのは普通に犯罪。」
こちらにどんどん近づく真山の足音に重なる様に、もう一つの足音の方で声がする。
「源人くん、俺があいつ抑えよか?」
「駄目、林田さんには絶対怪我させたくない。」
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