61人が本棚に入れています
本棚に追加
数分後、私は後を追いかけてきたメイドに拘束された。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
息が苦しい。こんな風に全力で走ったのはいつぶりだろう。
「お嬢様! 急に部屋を飛び出して一体どうされたんですか! 学校に遅れてしまいますよ!」
そうだ、学校に行けばすべてが分かるはず。ここがどんな世界であるのか。
貴族階級の令嬢、令息が通う国立魔法学校「マルスート」。その西棟のはずれにある第二図書室。利用する人はめったにいないその部屋の扉を開いた。
扉の開く音に驚いてこちらを振り向く顔と目が合う。
色素の薄い肌に穏やかな顔立ち、そして目の下にあるホクロ。この世界で一番会いたかった彼の姿がそこにはあった。
彼が口を開く。
「見ない顔ですね。僕の名前はルイス・コーネル。あなたは……」
「よかったー! まほプリ1の方だったー!」
魔法学校のプリンセス、通称「まほプリ」には1と2がある。1作目の人気が高かったため、続編のまほプリ2が作成されたのだが、その2作には大きな違いがある。
まほプリ2には、ルイスがいないのだ。正確に言えば、降ろされた。
1作目の攻略キャラ5人のうち、4人はそのまま引き継ぎ、人気のなかったルイスの代わりに不良キャラのキースが登場した。
私は初めてゲームをプレイした時からルイスが好きだ。シナリオもルイスの優しさがよく出ていて最高だった。主人公と思いが通じ合うラストシーンなんて、親目線で心から祝福したものだ。
それなのにその良さは世間に伝わらなかったみたいだ。優等生キャラのルイスは、他の俺様系やツンデレ系に比べると刺激が物足りなく思われたのかもしれない。
この世界にはルイスがいる。それならこの世界ではルイスを一番の幸せ者にしたい。きっとそのために私はこの世界に来たんだ。
まほプリ1の世界であるなら、他の攻略キャラやゲームの主人公もいるはず。ルイスはいずれ主人公のことを好きになる。他の攻略キャラ達もそうだろう。彼らを出し抜いて主人公と結ばれることがルイスにとって一番の幸せなんじゃないか?
「まほ、ぷり……?」
きょとんとした顔で私を見つめるルイス。
ああ、可愛くて尊くて最高のルイス。私が必ず主人公とのハッピーエンドを迎えさせてあげるから!
最初のコメントを投稿しよう!