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なんて思っていたが相性がいいのは間違いではなかった。一月も経つと私も慣れてしまって、本当にイケメン談義をしていた。
「三年四組の雪原くん知ってる?」
「ああ。眼鏡で長髪の方ですね。もちろんチェック済みです。僕、妄想でなら抱かれてもいいです」
「ほうほう。優弥くん、お目が高い。眼鏡と前髪のせいで判別しづらいけど、かなり整った顔してるんだよね。イケメン妄想には外せないメンバーだよね」
「そのタイプで言ったら一年一組の佐々木くんもいいですよ。小柄だけど可愛い顔してるんですよ。腐男子が抱きたくなるくらい」
「もちろんチェック済みだよ。弟系ハーレムでメンバー構成するときは必須だよ」
なんて会話を真由の横でするようになると真由は冷めた目で私たちを見てくる。
「あのさぁイケメン談義は私のいないとこでしなよ? しかもここ三年の教室なのに川田くんはなんで当たり前に毎日来るわけ?」
「美樹先輩に一年の教室に来てもらうのは申し訳ないですから。僕は一秒でも長く美樹先輩と一緒にいたいし」
「はいはい」
真由は呆れたように肩を竦めるが、真由の言っていたことは本当だった。優弥くんという彼氏ができた私はパラレルワールドトリップの時間が減って学業も手を抜かなくなった。何なら年下の優弥くんに勉強を教えたい欲も出てきて、間違いなく勉強する時間は増えた。イケメン妄想はするけど自己完結するより優弥くんとイケメン談義することで妄想の幅は広がってしまった。優弥くんがイケメンに抱かれたいとか抱きたいというのもあくまで妄想止まりだと分かって気にもならなくなる。
「真由があのとき言ってくれなかったから私、OKしなかったんだろうな。真由にあのとき散々怒られたから優弥くんの告白OKしちゃったんだろうな」
「歴史のテスト返された日? まぁタイミングいいのはあるよね」
そのタイミングで優弥くんは猫のような笑顔を見せる。
「偶然じゃないですよ。あの日、真由先輩が廊下で美樹先輩に彼氏が必要だって言ってやったってお友達に叫んでいたのを聞いたから僕はチャンスだと思ったんです。美樹先輩を誰にも奪われたくなかったし、そのとき、今日しかないと思ったんですよ」
「そうなの?」
私は目を丸くしてしまうが、それは真由も同じようで。
「じゃ、恋のキューピッドは私だってこと?」
「そういうことです。美樹先輩は人気があるんです。美樹先輩はイケメンを妄想に登場させますが、男子の妄想の中では美樹先輩が登場してる頻度は物凄く高いですからね」
お昼休みの一コマ。真由は黙ってパックの牛乳に口をつける。私も覚悟する。優弥くんがこんな物言いをするときは殺し文句が来るのだ。
「僕の妄想の中で登場する女子は美樹先輩だけですもの」
間違いなく小悪魔男子。でももう慣れた。お返しとばかりに私も言い返す。
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