ヘルメン

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ヘルメン

1 「ヘルメン」と藤井が言った。 「なんだよそれ」と俺は尋ねた。 「字のごとくだ。ヘルメン・イズ・ヘルメン」 「メルヘンだろ」 「ちげーよ。ヘルメンだっての」  藤井はやたらと不満そうに眉根を寄せた。 「地獄の男か?」 「なに言ってんの?」 「いや、英語だろ。ヘルのメンで」 「えっ、ああ。だったら地獄の男たちじゃねーの?」  どうでもいいところで細かい男だ。本が高さをそろえて整然と並べられている本棚を見て、俺は呆れた。 「イケメンは一人でもイケメンって言うだろ?」 「あれっ。言われてみればそうだな。最初に間違えたの誰だよ」 「知らねーよ」 「俺ですらそんな文法間違えねえぞ」 「っていうかイケマンじゃなんかダサいだろ」 「ダサいというより、なんかエロいな」 「まあ否定はしないけどな」
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