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俺はこのとき、大学からの友人であり、創作仲間であった藤井の「ヘルメン」という言葉の意味を理解していなかった。「ヘルメン」は、いつの間にか始まって終わった『一文字変えるとエロくなる言葉探し』という、実にくだらない、どうでもよい遊びに取って代わられてしまっていた。これ以降、藤井は少なくとも俺との会話の中で「ヘルメン」という言葉を使うことはなかった。また、後になってこのときのやり取りが二人の間で再び話題に上がることもなかった。かろうじて再度話題に上がったのは、俺たちの努力の成果物である、一文字変えるとエロくなる言葉だけだった。
つまりこれが生前の藤井が口にした、最初で最後の「ヘルメン」であった。
藤井と俺の出会いは三年前、大学入学時に遡る。たまたま同じ学部、学科に居合わせ、たまたま新入生オリエンテーションで同じグループに入れられた。
そのときの藤井は黒縁メガネをかけた冴えない男だった。身長は男子の平均程度で、体格は少しぽっちゃり。髪は中途半端な長さで、服装は地味なシャツとジーンズ。女子とイチャイチャした経験などなさそうで、これからもイチャイチャすることはなさそうなヤツだった。
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